よるの読書日記
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2001年08月07日(火) 部屋と歪曲と私

映画版で、今や日本一有名なプッツン女優と
その巻き添え食ってる俳優が共演したことでも
話題の「秘密」(東野圭吾/文春文庫)。
女優さん巻末にエッセイを寄稿してますが
「東京デザート物語」(林真理子/集英社文庫)
の解説同様、素直でいい子の文章だ。
本当に本人が書いたか知らんけど・・・。
優等生が壊れると怖いねぇ。
少なくとも芸能界では、元気でさわやかな
トップアイドル。紛れもなく優等生だったはずの彼女。
この先どうなるのか、はっきり野次馬根性で楽しみだ。

で、「秘密」である。実は映画を先に見ちゃったのだけど
原作の方が二人で秘密を抱える年月が長いらしいし、
気になってやっぱり読んでしまった。
うーん、やっぱり切ない。切ない愛の物語だ。
しかしねぇ、それが成立するのはやっぱり父と娘だからだよ。

これが妻が留守番してて息子の身体に旦那の魂、
なんてことになったらただの地獄。
まずこの先生きていくために働かなきゃいけない。
慣れない仕事でくたくたになって帰ってきたら
夫はすっかり童心取り戻して泥んこだらけ。
お米ひとつ研いであるわけじゃなく、
すんなり第二の人生を謳歌中。
ヒステリー起こそうものならそんなときだけ
夫面してなだめすかそうとしたり、呆れたように
「お前、鏡見てみろ。」
なんて大嫌いだったあの口調で言う。

自分だけが老いていく。自分だけが取り残される。
破綻はすぐに訪れる。
休日の掃除中、遊びに出かけた彼の机の
引き出しからはみ出した、花柄のかわいい封筒。
この時期は女の子の方が早熟だから・・・。
封筒を握りしめる彼女。

その日の夕食は彼の好物ばかりが並ぶ。
久しぶりにご機嫌な彼女に夫もほっとした表情。
これこそまさに毒入りスープで一緒に行こう!の世界だ。

「秘密」がそんな話じゃなくて良かった。
でなければ読んでる途中で恐怖のあまり本を
落っことしてたかもしれない。


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