兼松孝行の日々つれづれ

2002年01月08日(火) ちょっと演出論

ここ数日、演出のあり方について考えさせられることが多い。
いろいろ考えて分かったことは、そんなにたくさんある訳じゃないけど、稽古場では最も言葉を尽くさなければいけない役割だということ、が分かった。
それから役者には絶対に分からない視点を役者に伝えることが仕事なんだと思う。

演出は少なくとも芝居の出来不出来に関する責任者であり、同時に芝居の世界を支配する王様でもある。
役者は王様に仕える子分である。
子分は王様により役割が与えられ、その物語で生きることを許されるのである。
そして、王様の世界観を実現させていくのである。
しかし、王様は少しでもその仕事をさぼったり能力がないと見抜かれると、あっという間に下克上が起こってしまうのである。
奥ゆかしい子分の場合はその下克上は隠密裏におこなわれるのでなお厄介である。

だからこそ王様は言葉をつくし全身全霊で子分たちを統率しなければならないのである。

そして、一生懸命王様に尽くそうとしている子分が、もしも王様の世界観を勘違いをしていたり全く分からないでいたら、やはり言葉をかけて修正してやらなければならないのである。
一生懸命尽くそうとしている子分たちは、自分が何故いけないのか、どこがいけないのかということは分からなかったりするのである。

王様の世界観を理解する為に子分たちは必死で努力をしていく訳だけども、王様が言葉を尽くしてはじめて子分たちは理解できる。
役割としては上下関係かも知れないけど、実際は違う人間同士のコミュニケーションである。
お互いすりよる姿勢を見せないとお互い理解ができないのである。

その為に役者は実際の稽古場で表現をする訳だけれども、演出は言葉でその形をイメージさせていかなくてはいけない。
だからこそ、他の誰よりも最も言葉を尽くしていかなくてはいけないのである。


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