つれづれ日記。
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2012年04月30日(月) 白花(シラハナ)への手紙(仮)・80

「見かけない顔だね。ユータスの知り合い?」
 声の主はやっぱり男の人。でもこの中の面々では一番温厚そうな人だった。
「あの。兄ちゃんにお弁当持ってきたんです。多分食べてないだろうと思って」
 わたしの代わりにウィルくんが対応してくれる。ニナちゃんとは違って、ここでは弟の方が免疫があるようだ。
「それで、お嬢さんはうちの弟子とどういう関係?」
「わけあって、ご自宅にお世話になってます。今日はエリーさん──ユータスさんのお母さんに頼まれて持ってきいました」
 昼食の入ったかごに視線をおくる。早起きしておばさまが作ったサンドイッチ。食べたことはあるけど、作ったことはなかったからものは試しとわたしも少しだけ手伝った。せっかくここまできたんだから食べて欲しいところだけど、押し付けになるのもあんまりかな。
「名乗りが遅くなってしまったね。私はカルファー・アルテニカ。この工房の職人と依頼人の橋渡しをしている者だよ」
「イオリ・ミヤモトです。よろしくお願いします」
「ちょっと待ってね。ユータスはどこにいるかわかる?」
 カルファーさんが周りに声をかけるといつものところだとという声が返ってきた。いつものところってどこだろう。工房の中だとは思うんだけど。
「心配してたんだ。ユータスはいつもああだから。でもちゃんと年頃の友人もいたんだね」
 優しげな目元から、彼のことを気にかけていたことがよくわかる。でも『ああ』とは一体。そもそもわたしとユータスさんが出会ったのはほんの少し前。それまでのわたしはこの国にすらいなかったし今だって友人というよりも知り合いにすぎない。なんとも言えない表情をしていたのがわかったんだろう。カルファーさんが言葉を続けた。
「君はユータスのこと、どこまで知ってる?」
「この工房で働いている細工師見習い?」
 子どもの頃から親戚すじであるこの工房で細工の仕事をしていると道すがらウィルくんに聞いた。
「あってはいるんだけどね。彼が親元を離れてここにきたのは8歳からなんだ」






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2010年04月30日(金) 委員長のゆううつ。26
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2006年04月30日(日) 「EVER GREEN」8−12UP
2005年04月30日(土) 創竜伝
2004年04月30日(金) 本気で書きそうです
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