つれづれ日記。
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2012年04月02日(月) 白花(シラハナ)への手紙(仮)・54

「お気持ちだけで充分です。ありがとうございまし――」
 長居してもよくない。一泊させてもらっただけでもありがたいのに、朝食までいただいた。そのうえさらにご厄介になろうだなんて虫のよすぎる話だし。
「イオリちゃんは急いでいるの?」
「そんなわけじゃないけど」
 ニナちゃんの声に首を横にふる。施療院の場所は昨日行ったからすぐにでもいける。リオさんの話だと先生が帰ってくるまでには時間がかかるそうだから、おばさん夫婦の家からあたりを散策しようと思っていた。だけど、そのおばさん夫婦はあいにくの留守。というよりも引っ越して存在はもぬけのから。だから、間借りできる場所を探してみよう。そう思っていた。
 その旨を伝えると、だったらとさらにお願いされた。
「女の子が全く知らない場所を一人で歩くのは危険でしょ? こんな背の高さだけが取り柄でもお兄ちゃんは男だし、生粋のティル・ナ・ノーグ生まれなんだから。ここは絶対案内してもらったほうがいいよ」
 確かに一人で歩き回りよりも案内がいた方が助かるけれど。それにしてもどうしてここまで良くしてくれるんだろう。むしろ、哀願されてるされてるようにも思えてくる。戸惑いの視線を弟くんに向けると、『ねえちゃんは心配なんだよ』と返された。
(兄ちゃんってほんとのほんきで出不精なんだ。気になることがあれば飛び出すくせに、それ以外のことはからっきし駄目でさぁ。今回だって、イオリさんのことがなかったら、それこそほんとの本気でグールになってたと思うよ)
 それはさすがに言い過ぎなんじゃと思ったものの、昨日の一連の行動を思い返して納得してしまう。すくなくとも、あの異様な光景と行動力は目を見張るものがあった。
「イオリさんが気に病む必要なんかないよ。むしろこっちからお願いしてるんだから」
 家族三人からの熱い視線を受けてさらに戸惑ってしまう。
 かけど、助かるのは事実だし好意に甘えてもいいのかな。
「それじゃあお願いします」
「オレ、何も言ってな――」
『まかしといて!』
 男の子の意思は他の家族の声にきれいにかき消されてしまった。






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2011年04月02日(土) 「委員長のゆううつ。」STAGE1−8UP
2010年04月02日(金) 委員長のゆううつ(仮)。2
2007年04月02日(月) 中間報告二十回目
2005年04月02日(土) 仮面ライダー
2004年04月02日(金) 「EVER GREEN」5−9UP。
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