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赤岳報告・暗闇の林道歩き




暗いよ… 怖いよ……

足を踏み入れた林道、当たり前のことですが真っ暗です…。
ヘッドライトの心細い明かりが道をぼーっと照らし出すのですが、思わず手探りで歩きたくなるような深い闇。

顔を上げてあたりを見るとヘッドライトの弱い光に照らされた杉木立がぼんやりと闇に浮かび上がります。何かが出てきそうで、思わずまた目の前の道に視線を戻します。

私、一体何やってんだろう……。思わず来たことを後悔しそうになりましたが、とにかく1時間歩けば登山口の美濃戸に辿り着きます。それまでの我慢。30分も歩けば、すこしづつ明るくなってくるはず。

途中、何台かの車が私を追い越していきます。いいな、車。私は徒歩で行くしかないものな……。

少し行くとまた一台の車が近づいてくる音が聞こえてきて、私は出来る限り道の端っこによけて車が通りすぎていくのを待ちました。私の横を白いセダンが低速で通り過ぎると、少し前で停車しました。も、もしかして乗せてくれるのかしら〜、と、ちらっと虫の良い考えが走ります。

助手席側の窓はするすると開き、推定年齢30代後半くらいの男性が、声をかけてきました。

「すいません、ちょっと道をお尋ねしたいのですが」

えっ?道??? 一本道ですけど、ここ…。
という私の懸念をよそに、

「この道をずっといくと、登山口に着きますか?」

というお尋ねが。
……。この道が登山口へ向かう林道でないなら、こんな時間にこんなところを歩いている私は、いったい何なんでしょうね、と思いつつ「私もはじめてなんですけど、多分この道で大丈夫だと思いますけど」と、返答すると、その彼はちょっとほっとした表情を見せ、

「そうですか。この上に駐車場ってありますか?」

と、再度の質問を口にされました。
……。調べてから来いよ、とは口に出さず、私も初めてだって言ってるじゃん、という思いも口には出してはいけません。
「確か、山小屋に併設されている駐車場があったと思いますが…」と、ガイドブックで仕入れていた情報を元に答えると、

「そうですか、ありがとうございました」

という言葉を残し、再びするすると窓は閉まってしまいました。走り出したその車は、事故らないで無事辿り着いてね〜、と思わず応援してしまうほどのおそるおそるな危なっかしさ……。上まで同乗しませんかと誘ってくれなくてありがとうね。その運転には、悪いけど、乗りたくないな〜。(←だから誘われてないって…)

やがて車が遠ざかり、テールランプの明かりも見えなくなると、でも、そうだよね、暗闇の中では車で行くのも大変だよね、と思うと同時に、また独りぼっちになってしまった…、という一抹の淋しさが胸中をよぎりました。たったあれだけのやりとりでしたが、実は、会話できるのが嬉しかったのかもしれません。私もそうですが、あちらも、先の見えない真っ暗な中を行くの、相当に不安だったんだろうな。

殆ど5分おきにちらちらと時計を眺めつつも、とにかく先へと行くしかない林道歩き。でも、30分もすると少しずつ明るくなってきて、ヘッドランプの明かりは不要になりました。

50分ほど歩いたところで、この辺で山小屋が出てきてくれると嬉しいんだけど、と思っていたところ、私の思いが通じたのでしょうか、小屋が、小屋が!!! 




人がいる、という気配を感じるのが、こんなに嬉しいものだとは。でも、この時は随分明るくなったと思っていたのに実際はまだこんなに暗かったんだな……。帰ってきてから写真を見てびっくりしました。

2004年08月11日(水)
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