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■ 探し物。
6月の、梅雨でじめじめしたこの時期。 毎日雨ばかりで憂鬱になったりもするけれど、それなりに楽しいこともあったりする。俺はもうそんなことはどうでもよくなってしまったけれど、今自分の目の前にいる妹はまだそれを心待ちにしている様子だった。 眉を下げて、まるで泥棒でも入ったかのような部屋のまん中にぽつんと彼女は立っていた。
「・・・・・・キラ、引っ越しでもするのか?」
色々なものを保管しておく部屋。ここには色々なものがある。もし自分の部屋になければここを探せばきっと見つかるというくらい、色々なものがおいてあった。
「あ、おにいちゃん・・・僕の水着知ってる?」
キラは眼下に広がるものをじっと見つめて、目当てのものを探す。だがしかし、キラの目にはそられしいものが映らなかった。
「明日からプールの授業が始まるんだけど・・・見つからないんだ。」 「水着、かぁ・・・。」
アスランもその部屋をぐるりと見回した。キラがあたりをかき回してしまったせいで、探すのが余計に困難な状況になっていて、アスランもそれを見つけることが出来なかった。
「どうしよう・・・ずっと楽しみにしてたのに・・・。」
見つからない焦りと不安からか、キラの瞳が揺れていた。 そんなキラを放っておけるアスランではなく、キラの頭を軽く撫で、ゆっくり顔をあげたキラの頬に一つキスを落とした。
「大丈夫だよ。一緒に探してあげるから。」 「ホント?」 「当たり前だろ。それにこれはキラ一人じゃ片付けられないだろ。」
どこから手をつけてよりのやらさっぱり分からない程にぐちゃぐちゃになってしまった部屋。これをキラに元に戻せと言ったら一日かけても終わらないであろう。
「ありがと、お兄ちゃん。」
にっこりと自分だけへの笑顔が向けられる。 最近、キラは少女の顔と女の顔を見せるようになった。そのどちらも自分が作ったものだと考えると、悪い気などしない。 キラはまたその瓦礫をあさりだし、アスランはそんなキラをじっと見つめたあと、その部屋を出ていった。
「キラ、これなーんだ。」
しばらくしてアスランはキラのいる部屋へと顔を出した。キラは相変わらずたくさんの荷物と格闘していたのだがなかなか見つからず、少し疲れた顔をしていた。 後ろから声をかけられ、キラは振り向く。すると見たことのあるいれものを手に持ったアスランがドアのあたりにもたれ掛かっていた。
「・・・・・・あれ?どうしたの、それ!!」
アスランが手にしていたのはまぎれもなく自分が探し求めていたもの。キラのプールセットが入っている水着入れであった。キラは転ばないように道を選び、とたとたとアスランのそばへとかけよった。
「どうしてお兄ちゃんが持ってるの?」
ほんの少しの間、いなくなっていたと思っていたら、お目当てのものをもって現れた。実はアスランは魔法使いか、もしくはアスランが隠しもっていたとしか考えられないような状況であった。
「キラの部屋にあったんだよ。」 「・・・・・・・・・・・・え????」
思いもよらぬ答えを返され、キラは目をぱちくりさせた。だって自分が探した時は・・・。
「ちゃんと自分の部屋、探した?」 「え?あ・・・れ?」
そういえばキラは自分の部屋を探した記憶がなかった。自分の部屋でそんなものは見たことなかったし、あるとしたらこの部屋だと思っていたから。
「・・・・・・ごめんなさい。」 「いいよ、別に。けど来年はこんなことにならないようにね。」 「分かってる!今度はちゃんとするから。」
キラがこのセリフを言うのは一体何回目だろうと考えながらアスランはくすくすと笑った。キラもそのことに気づいたのか、笑うアスランをほんの少しだけ眉を潜めた顔で見上げる。けれどアスランはそんなキラを気にした様子もなく、キラに微笑みかけた。 「さて・・・この部屋を片付けないとだな。」
アスランは途方もなくなってしまった部屋を見回した。どこから手をつけてよいかなんて分からなかったけど、がんばれば今日中に終わるであろう。
「お兄ちゃん・・・僕、どうすればいい?」
自分が下手に触ると余計に大変なことになることはキラも少しは分かっていた。だからこれ以上アスランに迷惑をかける訳にも行かず、キラは見つけてもらった水着入れをぎゅっと持ちながらアスランを見上げているしかなかった。
「・・・!!」
縋るような目で見上げるキラは、あどけなさが残る少女そのものだった。しかしその雰囲気は少女のものではなく、男達を惑わせるかのようなものでもあった。 自分が育てた花とはいえ、自分以外の男が自分と同じようにこの花に惹かれるかもしれない、と最近アスランはずっとそんなことを考えていた。キラにもしものことがあったら・・・と、ここ最近のアスランは気が気でならない。キラはそう言うことに関してはかなり鈍いので、ぼーとしているところにつけいられそうだからだ。
「お兄ちゃん?どうかしたの?」 「え、あ、ごめん。ちょっと考え事。片づけはいいから、キラはその水着着てみなよ。」 「・・・え?」 「だってきつくなってるかもしれないだろ。キラも成長してるわけだし。着れなくなってたら大変だろ。」 「あ、そうか。」
素直に頷いたキラにアスランは小さくため息をついた。純情に育てたのはアスランだけど、ここまで素直に信じきられてしまうと、キラを一人にすることすら危ういと思ってしまう。自分自身が重傷だということは分かり切っているのだが、それ以上にキラが心配なのだ。
(水着が着れなくなってるわけないじゃないか・・・・・・。)
どちらにしろ今年一年しかもう着ないのだ。来年は進学し、そこで新しい水着を買うのだから。今着たところで何ら代わりはない。 まぁ、自分の事をここまで信頼されているというのはうれしいことなのだけれども。
「じゃあちょっと着てみてくるね。」
バッグを持って部屋を出ていこうとするキラを、アスランは呼び止めた。
「着替えたら俺にも見せてくれよ。」 「分かった〜〜。」
そう言ってキラは自分の部屋へと戻っていった。
「・・・・・・そろそろ違うことも教えないとかな・・・。」
自分以外の男を見ないように。ころっと回りに騙されないように。しっかりしているようで抜けているキラに、色々と。
「さて、片付けるか。」
アスランは気合いを入れ、荒れ狂った部屋の片付けを始めた。
=========== アスキラ兄妹もの。すっごい途中ですが。 二人の性格を決める為のリハビリなんですけど・・・キラがここまで純情乙女なのもどうかと思う今日この頃。 もう少しアスランを疑うくらいの方がいいかもしれませんな。
2004年06月07日(月)
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