本日の一作: ・『秋の花』(北村薫/創元推理文庫)
悲しいような、切ないような、何とも息苦しい読了感を味わえる。 円紫さんシリーズ初の長編(中編かな)小説を再読した。 主人公の「私」もいよいよ大学三年生の後半に差し掛かり、 より一歩、確実に現実の社会へと進んでいっている中で、 痛ましい事故で心に深い傷を負った少女と触れ合う。
そう、この作品の最大の特徴は「死」の匂いが纏わりつくこと。
しかも、自分よりも若い世代の命が失われたことへの動揺である。 先日、弟の同級生が事故で亡くなった時の感触を思い出す。 小・中・高(彼は中退したが)を通じて一緒だった子なので、 私も何度か顔を合わせている。家にも遊びにきていたはずだ。 それなのに、もうその子はこの世にはいないのである。 まるで映画のよう、とても現実に起こりうることだとは思えない。 それでも、私の周りでもやはり何人かは命を落としていっている。
友人が友人を想う気持、教師が生徒を想う気持、親が子を想う気持。 この作品の中には、人が人を想う気持が溢れている。 それゆえに、悲しい。そして、愛しい。
でも、文学的に面白い話もたくさん出てくるのだ。 「耳食」の話。 音楽でも小説でも他人の先入観で決めてはいけないということ。 私は他人の紹介で作品を選ぶこともかなり多いのだけれど、 ソレが本当に面白かったかどうかはやはり自分で決められるセンスが欲しい。
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