| 2009年02月05日(木) |
米:驚く保護主義の動き |
報道 1、社説:バイ・アメリカン―保護主義の誘惑を断て 2009年3月15日 朝日 2、社説:バイ・アメリカン、保護貿易主義は許されぬ 2009年2月5日 読売新聞 米国の国会議員は、住宅バブル・金融システム・消費バブルの崩壊などの混乱の渦の中で冷静な判断が出来なくなって来ているように思う。戦後の自由貿易体制の中心となってきた米国が、公共事業から輸入製品を締め出す法案が審議されている。公共事業で米国製の鉄鋼の使用を義務づける内容で、下院が先週可決した。賛成の中心となったのはオバマ大統領の与党、民主党なのである。上院では義務づけの対象品目を工業製品全体へ広げた法案を審議中というから驚きだ。
今回のバイ・アメリカン条項で米国が外国製品を排除すれば、同じように他の国で米国製品が排除される恐れがあるからだ。そうなると米国の輸出企業も打撃を受ける。報復が報復を呼ぶ貿易戦争になれば、世界貿易はますます縮小し、共倒れになるのは必至である。米国の議員には経済危機の震源地となって不況を世界中へ及ぼした責任感がないのだろうか。これがあれば世界経済が壊滅に進む保護貿易主義の動きは取らないと思う。経済の混乱はまだ序の口ナノかも知れない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1、社説:バイ・アメリカン―保護主義の誘惑を断て 2009年3月15日 朝日 世界同時不況を受けて、輸入関税の引き上げや自国産業への補助金のような保護主義的な動きが、各国に出ている。そこへ、よりによって戦後の自由貿易体制の中心となってきた米国で、公共事業から輸入製品を締め出すような法案が審議されている。 問題の「バイ・アメリカン(米国製品を買う)」条項は、8千億ドル(約72兆円)を超える景気対策法案に議員修正で盛り込まれた。公共事業で米国製の鉄鋼の使用を義務づける内容で、下院が先週可決した。賛成の中心となったのはオバマ大統領の与党、民主党だ。上院では義務づけの対象品目を工業製品全体へ広げた法案を審議中だ。 これには各国から批判の声が高まっている。欧州委員会は「可決されれば看過できない」と警告。日本も二階経済産業相が先週末の世界貿易機関(WTO)の非公式閣僚会合で「昨年11月の金融サミットで保護主義防止を誓った首脳宣言の趣旨とまったく違う」と指摘し、見直しを求めた。 オバマ大統領は今週、テレビのインタビューでこれについて「貿易が世界規模で落ち込んでいる時に、米国が世界貿易より国益ばかり考えているというメッセージを送るのは誤り」「貿易戦争を引き起こさないという保障が必要だ」と述べた。もっともである。 ただ今後、上下両院の調整を経て、もしこの条項が景気対策法案に含まれたまま議会を通れば、オバマ氏も難しい立場に置かれる。拒否権を行使すれば景気対策の財政出動や減税まで遅れるし、いきなり議会と対立するのは新政権として避けたいところだろう。 そこは、世界の期待を背負って登場したオバマ氏である。いまから議会を説得し、保護主義を寄せつけない姿を世界に見せてほしい。上院は考え直して条項を削除すべきだ。 米国は大恐慌下の1933年にもバイ・アメリカン法をつくり、世界経済の保護主義化に拍車をかけた。それが誤りだったことは、その後、世界不況が長期化し世界大戦へとつながった歴史がはっきりと示している。 今回のバイ・アメリカン条項には、米国の産業界の中にさえ反対論が強い。米国が外国製品を排除すれば、同じように他の国で米国製品が排除される恐れがあるからだ。そうなると米国の輸出企業も打撃を受ける。 報復が報復を呼べば、世界貿易はますます縮小し、どの国の経済も共倒れになってしまう。 4月に開かれる2回目の金融サミットでは、この保護主義が焦点の一つとなるだろう。そのときオバマ大統領が首脳たちへ「自由貿易の堅持」を訴えられるよう、自国の保護主義を排除しておく。経済危機の震源地となり不況を世界中へ及ぼした米国には、そのように行動する責任がある。
―――――――――――――――――――――――――――――――― 2、バイ・アメリカン、保護貿易主義は許されぬ(2月5日付・読売社説) 2009年2月5日01時43分 読売新聞 世界不況が続く中、米国が保護貿易に走れば、景気回復にも悪影響を与える。かつての大恐慌を深刻化させた教訓を忘れてはいけない。 オバマ米大統領は、保護貿易の封じ込めへ、強い決意で臨む必要がある。 米議会下院が1月末に可決した8000億ドル超(約74兆円)の景気対策法案に、「バイ・アメリカン条項」が盛り込まれた。 米国政府が発注する道路や橋などを建設・改修する公共事業で、米国製の鉄鋼を優先的に購入するよう政府に義務づける内容だ。 景気悪化で住宅と自動車市場が冷え込み、米鉄鋼各社の業績は急速に悪化した。米国製の鉄鋼を公共事業に優先的に使用させ、業界を支援する狙いだろう。 上院が近く採決する法案は、鉄鋼だけでなく、政府が調達する一般工業製品も、バイ・アメリカン条項の対象に加えている。外国製品を締め出すもので、露骨な保護主義といえよう。 米国は戦前の大恐慌の際、バイ・アメリカン法を制定した。各国が対抗したことで、ブロック経済化が進み、貿易が縮小して危機が拡大した。 これを反省し、戦後は貿易自由化が重視された。こうした流れの中で米国は、世界貿易機関(WTO)の政府調達協定で、日欧などに対しては、バイ・アメリカン法を適用せず、内外無差別とすることを約束した。 バイ・アメリカン条項はこの協定に違反している可能性が大きい。「今後1年は新たな貿易障壁を設けない」という昨年11月の金融サミット合意も反古(ほご)になる。 日本や欧州が、米国に懸念を表明したのは当然だ。全米商工会議所なども反発している。 オバマ大統領は3日、「貿易戦争の引き金を引くような条項が法案に盛り込まれないようにすべきだ」と述べた。各国の批判などを踏まえた発言とみられる。 上院で法案が可決された後、下院との調整を経て、大統領が署名し、法律が発効する。大統領は、問題の条項を削除するように議会を説得すべきだ。 金融危機が広がった昨秋以降、ロシアが自動車、インドが鉄鋼の関税を引き上げるなど、保護主義的な動きが相次いだ。 米国で保護主義圧力が高まれば、こうした傾向に一段と拍車をかける恐れが大きい。世界不況も長期化させかねない。 自由貿易を推進してきた米政権の姿勢が問われている。
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