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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
円山動物園のアメリカクロクマの風子さんがお亡くなりになりました。冬の雪が積もった時期に見に行ったら、いなくてさがしたけれど実は雪穴掘ってそこに冬眠しようとしていたというなんともマイペースな風子さん。その穏やかさで恋人にしたいクマベスト3に入る風子さん。次に行ってもいないなんて寂しいな。 田中学院 高等部養護教諭 上田 明。 彼はオカルト研究部の顧問でもある。彼の所属は高等部だが、たまに他の部にも現れる。いつもだいたい平和な田中学院だが、高等部はそれなりに忙しい。忙しいと言っても、相手は『怪我した』『具合が悪い』『眠たい』といった類だが。しかし、この日は事故が起こった。 昼休みに高等部2年の倉内綾名が泣きながら明を呼びに来た。岡崎良介が階段から落ちた、らしい。見に行くと本人は元気なく笑っていた。意識はあるし、頭を打たないように受け身をとったという。骨折はしていないようだが、足が動かないようだ。打撲か何かだろう。 「あいたたたっ!」 「しばらく安静だな」 肩を貸して立たせた。 「保健室まで行けそうか?」 良介は無言でうなずいた。綾名には心配しないようにと笑いかけている。 「良介ぇー」 「痛いだけだから平気だよ。先生に伝えといて」 「本当に大丈夫?」 「大丈夫、大丈夫。このくらい、じいちゃんよりマシだから」 岡崎家は古武術道場を開いていて、良介の祖父が今後継ぎとして良介を鍛えていることは知っている。彼の兄である優介とは同窓生だった。 「ああ、一応ここで応急処置、そして一応医者に行かないとダメだと思うから早退だと言ってくれるかい。連絡はこっちでしておくから」 「はい」 倉内綾名は心配そうだったが、職員室へ向かっていった。 保健室まで男子生徒、鈴木千太朗が手を貸してくれた。千太朗は不良ぶっていたがこの田学の変人変態の中でそれをしても意味がないことに気づき、すっかりなりをひそめてしまった生徒である。良介は彼に礼を言ったが、そそくさと行ってしまう。 「鈴木ってシャイなんだよ」 明は心の中で『それは、去年お前が喧嘩売られた時に受け流しだけで鈴木を負かしたからだ』とつっこんだ。 手当をしながら話をする。これも仕事の内だ。 「誰に押された?」 「……わからない」 まず、自分でドジを踏んで階段から落ちるようなことはない。足の打撲で済んだのは幼い頃から古武術を叩きこまれ、受け身がうまく出来たからだ。だが、気の緩んでいる学校生活の中で、生徒の行き来が多い昼休み中、誰にどう押されてしまったのか見当もつかないという。 「誰かに狙われる心当たりは?」 「……愛でる会、かな?」 やっぱりそうか、と明は思った。この弟も勘づいている。中等部の東可奈、大学部の中野春季、シンクタンク窓口の野田晴仁、この辺りは狙われている。 「とりあえず自宅に電話するから、今日はちゃんと病院行くこと」 「わかりました。あの秀兄には黙っておいてください」 「うん、まあ黙って置くけれど。秀くんってそんなにか弱かったか?」 「まあ今はちょっと」 「そうかなあ」 良介の迎えが来た後、明は優介にメールを送っておいた。その夜、優介と適当な居酒屋で落ちあった。 「よう、久しぶり」 「うまくやってるか、明?」 岡崎優介はほとんど時間に遅れることなく居酒屋に現れる。彼とはたまに会うようにしている。 「まあな」 「良が世話になったね。お袋から連絡来ていたけど」 「良くんは黙っていてくれって言っていたんだけどね」 「うん、自分でコケたなんて秀にはまず通じないね」 「そうだよなぁー。そうなると秀くんは気づくかな?」 「まあ、もうとっくに気づいているだけど、本人は今ちょっとね」 「なあ、ほんとそこんところ、何があったわけ? 元シンクタンクさん」 「あんまり過去のこと、個人のプライバシーにかかわることを根ほり葉ほり聞いちゃだめだよ。現シンクタンクさん」 「……ちっ」 「それにもう、学院から離れているからお前たち、学院が解決しなきゃダメなんだよ。愛でる会なんて馬鹿げた会のこと」 「やっぱり知ってんじゃねーか!」 「愛でる会は学院内外である噂だからね」 一体どこでその噂を仕入れてくるのか、学生の時から謎だった。どこかで危ないことをしているのだろうかと、明は心配する。 「ほんと、お前怖いよ」 優介は優しげな顔で「そう?」と言った。
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