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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
何故かというと、フェルトの色が限られているから。 縫い目で雑さがわかるだろう。 家庭科の先生に見本的なものをと頼まれて作りました。正直、型を起こしてまで作ったのは初めてかもしんない。(いや、ごく簡単なものだけど) 教えてもらった定食屋は閑散としていた。昼時もやや過ぎているのだが、これはないだろう。そう思って、カウンター席について生姜焼き定食を頼んだ。 「申し訳ございません、お客さん。生姜焼き定食は売り切れです」 女将さんは疲れた顔で言った。すでにもう一仕事終わっていたようだった。 「そうでうか、じゃあ、他にお薦めはありますか?」 「餃子定食はどうですか?」 「じゃあ、それで」 店を見渡すと『生姜焼き定食980円』と掲げていた。高いとも安いともつかない値段。餃子を焼き始めた店主に尋ねる。 「生姜焼き定食、人気なんですか?」 「ああ? ああ、そうなんだよな。不思議なもんだよ」 焼きながら店主は答えた。女将さんがお冷やを出す。 「なんか知らんけど、あんま流行んない店だったのさ、うちは。だけど、ある日混み始めたんだ。何かのブームかって思ったんだけどな。だけど、生姜焼き定食を頼んだ客だけはまた足を運んで来てくれるわけだよ」 「ふーん。こうなったら意地でも生姜焼き定食食べないと」 「ま、うちは餃子定食もお薦めなんだけどな」 そう話しているうちに餃子は焼き上がり、女将さんがご飯とみそ汁と漬け物、大皿にキャベツの千切りをのせていて、あとは餃子がのれば出来上がりだった。 「はいどうぞー」 目の前に置かれた餃子定食。値段と量を比較して、まあまあと思う。 美味しかった。いくらでも食べられそうだった。この店は餃子定食も行ける。 「そういや、しばらく来てないな、あのお客さん」 「ええ、そうですね」 店主がぽつりと言った。女将さんも頷く。 「それは?」 「ああ、そのお客さんが来てからなんだ。客が入るようになったのは」 広めることが自分の仕事だった。主に飲食関係の雑誌で記事を書いている。自分でいうのもなんだが、得意だった。多くは語らないがそれでもどういうわけか自分が書けば、その店は繁盛する。餃子定食を食べた翌日、生姜焼き定食も食べに行って、それから名刺を渡して、記事にしていいかと尋ねた。店主は、快く承諾してくれた。 「あの店主、これから大忙しだな」 そう、一つ付け加えるが、自分がいいと思った店ほどよく繁盛する。
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