また電話で、彼が「こっちに就職したら」とか言う。
私は、永久就職ならいいよ(はあと)って答える。
いつもならそこで終わる会話が、何故か今日は続いて。
「こっちに来ると色んな条件があるな……」
「なにそれ」
「ぼむさん免許持ってる? 車乗れる?」
「うん」
「こっちは車必須だからね。俺の実家は山奥だから、最寄りのコンビニまで四キロあるし」
「あー、同居前提の結婚って言ってたもんね。いつぐらいに同居を考えてるの?」
「40くらいかな……でも子供産まれたら同居って思ってる」
「あー、じゃあ、早ければ30代前半の可能性もある訳じゃん」
「うん」
「親が同居して欲しい人なの?」
「いや、どっちでもいいって言ってる」
「ふーん。うちは凄いよ、母親が。今でも実家に帰ってこいって言われるぐらいだもん」
「へー。じゃあ、県外の人と結婚するって言ったら反対されるかな」
「うーん……元旦那のときには、転勤族だったけど大丈夫だったよ。ただし、ことあるごとに地元にいずれ転勤できないのかとか聞いてきてたけど」
「そっかあ。凄いね」
「東京の人だと反対されるかもね……Bさんの地元だとどうかな。近いからなあ」
「俺の実家からだと更に近いよ。多分高速で二時間ちょっとで行けるんじゃないかな」
「そうだねえ……」
そんな会話をした。妙に具体的。
まあ、まずはお前が別れてからだな、という台詞をぐっと呑み込んで。
曖昧に、ふふふって笑っておいた。
夢物語はやめてくださいと思う一方で。
彼だって、このままレスの嫁と続けて子供出来るかどうかもわかんない状態より、地元に嫁いでくれるならば、身体の相性が良くて子供が持てる可能性のある私の方がいいんじゃない? という変に客観的な気持ちもある。
何が恐ろしいって、田舎も同居も絶対イヤとか思ってた私が、両方やってみてもいいかなとかいう気持ちになっていることだ。
彼の両親、いい人そうだし。 分別ありそうだし。
都会は大好きなんだけど、このまま一人で生きていく自分がピンと来ないし。
やってみてダメだったら最悪地元に戻ればいいし。
私の感覚をそれほど変えるぐらい、今回の逢瀬も濃かった。
彼が私を責めずに、落ち着いて相談に乗ってくれたことは大きい。
不倫の辛さも、もっと嫌な顔されるかと思っていたけど、思ったより真剣に受け止めてくれたし。
精神的に共にいられる人であることが、何となく感じられたから。
私の意識が変わってしまった。
彼も、そうなのかもとかちょっとだけ思う。
だけど期待しない。期待しない期待しない期待しない。
言い聞かせる。
夢物語で、願望を語ってるだけの茶番だこんなの。
元彼とだってそうしたじゃない。
だけど現実にはならなかったじゃない。
でも、彼と元彼とは違う、って脳内で響く声を振り切る。
ぐるぐる考えて、もう結局どっちに転んでもいいじゃないか、なるようになれとかって達観し出した。
悩んだって、どうせすぐのことじゃないし。
それなら私は大都市でもうちょっと頑張るし。
離婚しなかったらしなかったで、私は田舎に行かなくて済むし。
どっちだっていいじゃん、って。
とにかく言えるのは、待ったりしないこと。
いい人がいたらソッコー乗り換えるを合言葉に。
私は私のペースを崩さず、やっていこう。
乗り換えられたら嫌だなと思えば、彼の行動も早いだろうし、どうなるかは分かんない。
ここはどーんと構えよう。
とにかく、期待してなるものか。
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