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漫画関連ファイル


2005年01月29日(土)
よしながふみ『大奥』第三回 メロディ三月号

男ばかりが三千人の大奥に、新しい女の将軍様がやってきた。パラレル時代劇の第三回。総触れの場で将軍吉宗に気に入られた水野は、夜伽を命じられる。しかし、それは思いがけない事態を引き起こす。感想は以下(ネタバレ)






悪い冗談のように、男女の役割を入れ替えて、大奥のお話が続く。実は今回、読みながらなんとも言えない不快感を感じてしまった。作品にではなくて、大奥というシステムに対して。それから、自由意志のない夜伽の場面に対して。それはよしながさんが巧妙に作り上げたこの作品の世界で、普段は見えなくなっている理不尽さを目に見える形にしたのだ。かつては女性に対して行われていた人権の無視。それが今はBL作品で日常茶飯事になっている。それをもう一回引っくり返してみせたのがこの作品だ。全く、よしながさんは人が悪い。そして素晴らしい。
巧妙にハッピーエンドに仕立ててあるが、今ひとつものたりないのは、せっかく水野という、魅力的なキャラを登場させたのだから、もう少し、将軍とのからみが長く続いて欲しかったということかな、四回以降はどんな話になるんだろ。吉宗中心のオムニバスになるのかな。



2005年01月28日(金)
漆原友紀『フィラメント』

昨年発売された本。漆原さんが志摩冬青(しまそよご)名義で発表した作品に最近作を二編加えた短編集。『蟲師』の原点ともいうべき『虫師』も収録されている。
10年前の作品は、現在の蟲師につながるイメージを含んでいるけれど、作風はかなり違っている。もし彼女が蟲師を描かなかったら描いたかもしれない、違うイメージも見え隠れする。自分の言いたいことをふくらませて読者に伝える技術はつたないけれど、彼女らしい視点や絵の切り取り方は存在している。それはそれで楽しいが、この本の一番最初に載っている最新作、『岬でバスを降りた人』と『迷宮猫』があまりに素晴らしいので、漆原さんが現在の作品を描いていることを祝福せずにはいられないのだった。一こま一こまの絵が、漆原さんの個人的な体験から生まれているのに、それは私の体験と重なる。おそらく多くの人たちの記憶の底に触れる何かがある。そんな作品を読めるのは幸せだと思う。



2005年01月27日(木)
THE・少女マンガ!『エロイカより愛をこめて』

少女まんがをテーマにしたテレビ番組を見ると妙に気恥ずかしいのは何故だろう。エロイカの場合、初期作品が映ると、「うわー」と言ってしまいそうな自分。いろいろと貴重な映像(水野さんとかお姉さま方とか編集のWさんとか・・・)が拝見できて面白かった反面、もの足りなさもあった。マンガの中にいろんなネタが仕込んであるのは、イブの息子達からだし、高尚な芸術作品だけじゃなくて、「ゆかいなロンドン楽しいロンドン」だってあるし、和洋中なんでもござれというのは言わないのかなあ、とか。NATO軍の広報誌に載ったことやエーベルバッハ市から表彰されたことは瑣末なことなんだよ、とか。ネタを『ウフ』のエッセイから取ってるんじゃないよ、とか、いろいろ突っ込みつつ、じゃあ、どうしてあんなにエロイカに夢中になってたんだろうと、しばし考える。
講談社の専属の頃の青池さんの作品が苦手だった。少女まんがを描いていても、妙な違和感があったからだと思う。後年、青池さんのインタビュー記事などを読んで、彼女が自分に合わないものを無理に描いていたからだと知った。セブンティーン誌に連載されていた『七つの海七つの空』から『エルアルコン』にかけて『イブの息子たち』の途中から、青池さんがどんどん変わって行くのをリアルタイムで見た。卵の殻を割っていくように、それまで青池さんがこうあるべきだと思い込んでいたものから自分の描きたいものにシフトしていく様子が読者にも伝わってきた。(このへんは番組でも触れていた)目的のためには手段を選ばないティリアンの性格。今まで少女まんがになかった骨格のしっかりした身体の描写。国際情勢やスパイの話。それは青池作品だけの変化ではなくて、少女まんが自体が大きく変わって行く流れと同調していた。青池さんの作品の主人公達は少年愛全盛の時代にも、青年〜中年ってカッコいいんだよ、と見せ付けていた。(それが、現在のBLにもつながってると思うのはうがちすぎかしら?)
恋愛なんかに目もくれず仕事や任務や野望や趣味に走っている男達がとても魅力的に描かれていた。でもそれだけだったら、あんなに夢中にならなかっただろう。やっぱり伯爵と少佐の関係が重要だったと私は思う。伯爵は自分の趣味に生き、少佐は任務至上主義。このふたりが自分らしく行動した上で、心を通じるような瞬間が時々ある。(少佐は認めないだろうけれど)そこが好きだった。今だったら、簡単にコトに及んでしまうBL作品が多いけれど、エロイカではそんなことは起こらない。でも、「おれも浮上するぞ、伯爵」のひとことだけで十分なのだ。ベルリンの壁崩壊後、再開されたエロイカはとても良く出来た作品だけれど、昔のようなときめきは感じない。スラップスティックコメディのようにぐるぐるしたり、スパイ小説もどきのようにネタが仕込まれても、どきどきしないから。少佐と伯爵の関係はもう一歩も動かない。理想的なエロイカのラストは、私の頭の中では、少佐と伯爵の生死をかけた一騎打ちであるべきなのだ。・・・・えーと、番組の感想から大きく逸脱したまま終わり。



2005年01月26日(水)
冬目景『幻影博覧会』第一巻

表紙のセピア色を基調にしたデザインと、タイトルのフォントにほだされて買ってしまいました。大正時代の探偵さんとその助手の女の子の話。冬目さんの作品は『羊の歌』を甥っ子に借りて読みました。あの作品とは違って、軽いタッチで始まったこのお話。今のところ、ウォーミングアップ中といったところ。時代を感じさせる小道具や、出来事をどのくらい見せてくれるか、探偵と助手の過去にどれくらい入り込むことができるか、これから楽しみに見ていこうと思います。


2005年01月25日(火)
紺野キタ『知る辺の道』

いろんな雑誌や同人誌に掲載されたファンタジーを集めた短編集。とてもきれいで切ないお話ばかり。私は紺野さんの作品が好きで嫌い。少女マンガとして完璧なテクニックと美しい絵柄を持っているくせに、底の方にナイフを持っているから。安心してひたっていると、思わぬところで隙をつかれる。それがほんの少ししんどい。でも、それこそが少女の残酷さとかなんとか、誰かが言いそう。それでも、この本を読んで、いろんな記憶を刺激されて喜ばない少女マンガファンはいないだろう。そんなふうに、ちょっとフクザツな気持ちにさせる本。


2005年01月23日(日)
ひぐちアサ『大きく振りかぶって』第三巻

『バッテリー』のいきおいで二巻まで購入し、昨日買った最新刊。私はまだこの作品がどこに向かってるのかわからない。三橋の成長物語かな?それとも三橋と安部のバッテリーの信頼関係の話かな?ライバル達との切磋琢磨の話かな?科学的な野球の話にしちゃ、絵が情緒的な線だし。コーチの目はいっちゃってるし。どんな話なの?と思いながら読んでます。