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漫画関連ファイル


2002年11月30日(土)
『SONS』 by 三原順

この作品は、雑誌では読んでいなくて、コミックスが出るたびに買って読んでいた。
全7巻で、一巻目は昭和62年7月。最終巻は平成2年の12月に出ている。
古本屋で見つけた全巻セットを人に送ろうと思って出して、読み始めて最後まで読んでしまった。
(遅れてすみません、明日送ります。)
お話は『ムーンライティング』の続編というか、ムーンライティングの主人公の子供時代の話。
『ムーンライティング』が月夜に変身してしまう友達を持ったDDのドタバタを描いたコメディーだとすると
こちらは、お気楽に見えたDDのヘビーな生い立ちを、いかに彼が克服するか、というお話。
話は複雑で、一筋縄ではいかない。DDの空想の中の話も並行して進む。
登場人物はみな、いろいろなものを抱えている。
読みなれていない人にはなかなか入れないかもしれない。もう、こんな作品を描く人はいない。
でも読んでいくうちに、三原順の世界にどっぷりひたる幸せをしみじみ感じてしまう。
癖があって理屈っぽくて一筋縄ではいかなくて、それでもどこかまっすぐなところのある作品。
登場人物たちの確かな存在感。ペシミスティックに見えて、最後の最後は暖かい。
DDの一番言ってほしかった言葉を、言ってもらえた瞬間のコマが素晴らしい。
私は、ウィリアムが好きだな。大人のくせにDD相手に本気になってしまうところが。
他の人には完璧にバリアをはっているのに。
はみだしっ子のいろいろな場面が形を変えて現われる。少し経験をつんで洗練された形で。
三原さんは同じテーマを追っていたが、作品ごとにきちんと大人になっていった。
ほんの少し私たちの先を歩いていた。そのあとについて行くことは、大きな楽しみだった。
繰り返しになるけれど、ずっと見ることができなかったのが残念だ。



2002年11月29日(金)
『陰陽師−11白虎』 by 岡野玲子

書店で手に取って最初に思ったのは、「厚い・・・」だった。400ページ余り。
それで値段が1000円以下だから、白泉社はがんばっていると言えるでしょう。
さて、中身は・・・一読しただけではわからないというのが本当のところ。
でも、雑誌で立ち読みしている時よりも、話の流れは見える。
神、闇、始原、至上のもの、供儀、寶物。
それぞれのイメージは鮮明で、とても惹かれるのだが
この本を読んだだけでは何が何だかわからない。
何か他に知識が必要なのか?それとも岡野さんのハッタリか?
これは物語じゃなくて、岡野さんの考え方を披露する話なのか
悟りみたいなものを開いちゃった人の話を聞いてるのか?
残すところあと一冊でこの漫画は終わる。
それを読んだら、きちんと話は終わるのかしら。

で、ファンサイトをのぞいたら、わかる人にはくどいくらいの説明なのだそうだ。
かなり加筆してあるらしい。それでも、わからないぞ。



2002年11月22日(金)
『楽園まであともうちょっと』by今市子

月刊「花音」12月号を立ち読みしてきました。
今さんの『楽園まであともうちょっと』がおもしろかったです。
別れた妻の父親が遺した旅行会社を借金ごと引き受けてしまった黒メガネの男(川江)と、
借金取り立てをするサラ金の社員の浅田君とのラブストーリー(?)
浅田君は社長(男)と不倫の関係にありますが、こそこそと社長と逢引きすることに
嫌気がさしている今日この頃です。
社長の奥さんもふたりの関係を疑っている様子。
川江の別れた妻は、そんなふたりを応援しています。

今月号は、社長の奥さんの行動とか、サラ金会社の社員達の反応とか、
新しく出てきた不思議な山男(猿並さん)がおもしろかったです。
絶妙のタイミングとセリフと絵。ぜひ味わってください。
単行本になるのを待っているのはもったいないくらいですよ。
上品な猿並さんが実は・・・・というオチが最高です。




2002年11月11日(月)
『テレプシコーラ』(ダ・ヴィンチ12月号)

連載を読んでいてわくわくする漫画がある。
この年になっても、次が楽しみな漫画があるのは幸せなことだ。
連載終了したけれど、『西洋骨董洋菓子店』。
『ヒカルの碁』『バルバラ異界』読みきり連載の『百鬼夜行抄』と『雨柳堂』
『テレプシコーラ』は、とびきりり楽しみなお話だ。
あの山岸さんが描いているのに、少女マンガの王道をいっているんだから。

バレエ団の公演で、千花ちゃんは『くるみ割り人形』のクララに抜擢されたのに
六花ちゃんは本部のクラスの中でただ一人何の役ももらえなかった。
レッスンのあと、「あなたは帰ってね」と先生に言われてしまう。
先生の気持ちの問題や、バレエ団の運営の問題や、力関係の問題が
複雑にからんでいるのだが、そんなことは子供にはわからない。
「だけど涙が出ちゃう。おんなのこだもん」という
昔のアニメの主題歌そのものの展開。(バレエ違いだが)
しかし周囲の人たちのバックアップもあって
六花ちゃんは、なんとか負けずにがんばっている。

華やかな姉と大人しい妹。やさしい先生と厳しい先生。
羨望と嫉妬の中、好きなことのためならがんばる少女達。
どんなに多様化が進んで、洗練されていっても
マンガのおもしろさは初期のあざといばかりの物語にあるんじゃないか。
24年組は既成の枠を越えて世界を広げてくれたけれど
物語を少し見失わせてしまったかもしれない。
でも、山岸さんは戻ってきた。
しかも、昔に退行したわけではない。
これまで描いてきたものの蓄積の上に、お話が乗っているので
このままで済むわけがないと読者の期待は高まるばかり。
それに応えながら、山岸さんは物語を続ける。
千花ちゃんは羨望をはね返し、六花ちゃんは逃げなくなった。
空美ちゃんはいったいどこにいるんだろう。



2002年11月07日(木)
<テレビ>『BS漫画夜話ー百鬼夜行抄』

うっかりして放送を見逃してしまったのですが、TさんとYさんのおかげで
ビデオを見ることができました。どうもありがとう!おもしろかったです。
ファンサイトその他で、「漫画夜話には珍しくみんなが誉めていた」
と聞いていたのですが本当にそうでした。でも、ファンが楽しく語り合ってるようで
「そうそう」と頷きながら、おもしろく見ることができました。
岡田さんの「低血圧マンガ」と「諦念」というのがおもしろかったなあ。熱血しないんだ。
律はハムテルと同じか〜。じゃあ青嵐は教授で、司は菱沼さんか。チョビとミケは尾白と尾黒か(ちがう)
センダックのイラストとの類似が指摘されていて、夢枕さんが洋書に目を通しているなんてすごいと思った
たらなんたら言っていたけれど、あの絵本はことあるごとにnonnoとかMOREの絵本特集に
載っていたから私たちの世代にとっては珍しくはないのだ。
尾白尾黒は『文鳥様と私』の文鳥ライフが下敷きになっているでしょう。
半纏を着ているのは某女子大の習慣だとか、部外者の私でさえいろいろ思うのだから
身近な方々は突っ込みどころ満載でしょう。(笑)
さて、以前も書いたことだけれど北陸から見た『百鬼』についてひとこと。
富山県の古い町の家並みや家の中の暗がりが今さんの作品の中にはあるように思う。
湾に面した海岸とすぐそばに迫っている山の間の町。
海岸の岩場には祠がありしめ縄がはってある。
お年寄りが身近にたくさんいて、叔母さんや伯父さんがいて、
近所の人がやってきて茶のみ話に花が咲く。
毎日くり返される世間話の中で、出来上がっていく地域社会の世界観は
核家族化でだんだんなくなってきている。今さんの作品の中にはそれがある。
水木さんの作品に通じるのはそういうものだと思う。
同じ富山出身の藤子不二雄さんたちの世界とも近いものがあると思う。
金沢の漫画家さんたちにも通じる感覚だけれども。
そういうものが評価されるようになったのはいいことなのかな?