以前も書いたけれど、私が初めて読んだ漫画は『ハニーハニーのすてきな冒険』だった。 最初に出会った少女まんがが、水野作品だったことはとても幸せなことだと思う。 最近水野さんの作品が次々文庫化されて、後書きにたくさんの漫画家たちが イラストやエッセイを寄せている。それを読むと世代が5〜10年ほど上のようだ。 その世代になると『銀の花びら』や『星のたてごと』がリアルタイムになる。
リアルタイムではないけれど、私はこれらの作品を 小学生の時に読むことができた。 金沢の町なかの小学校に通っていた3,4年の頃。 ひろみちゃんというお友達がいた。 その子の家には親戚のお姉さんからもらったという漫画の入った本棚があった。 扉つきの内側に布のカーテンがついている木の本箱。 ひろみちゃんの家に入り浸り、私は『銀の花びら』も『星のたてごと』も 『茜ちゃん』や『島っ子』や『好き好きビッキ先生』や『金メダルへのターン』や 細野みちこさんの犬がでてくるお話の漫画を読んだ。 本はそれほど多くなかったかもしれない。 それでもひろみちゃんの家に行って、その本を読んだという記憶は 数十年たった今も残っている。古い町屋の部屋のくらがりと すりガラスごしの光の柔らかさと、通りを歩く人の気配のする ひろみちゃんの部屋は違う世界への入り口だった。
文庫を手にして、サンコミックスの装丁と手触りと違うと感じながらも、 本を開けば何十年も前にトリップした世界がある。 もう帰ってこないものと今でもそこにあるものと。 瞬間、私の足元が揺らぐ。
読んでしまうのがもったいなくて、机の上に置いてながめている。
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