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■■ 似合わないネタ
それははじめから、終わりの決まっている恋だった。 いずれは遠く隔てられてしまう人とわかっていたのに、離れられなかったのは紛れもなく私だ。そうして、あの人にまでこの思いを悟られ、別離を前にその表情を曇らせている。
「……この国の有りようを考えれば、これ以上の縁談はないと思う」
まるで言い訳をするように、あの人は目を合わせないままつぶやいた。 荒み腐りきった政を立て直すには、申し分のない政略婚。いや、相手の心はあの人にあるのだから、まったく愛のない婚姻ではないのだ。 報われないことも覚悟の上で、あの人が不在の二年もの時をひとり戦っていたのだから、今後はよき伴侶として、支えきれないほどの重荷を負ったあの人をしっかりと支えるだろう。 私の力では、あの人を支えることなどできはしない。 想いの強さでは負けはしないと言ったところで、現実は動かないのだ。私には、あの人にふさわしい地位もなければ権力もなく、そして何よりも、あの人が今もっとも必要としている才覚がない。
はじめから、わかっていたことだ。
「陛下のご決断に否やを唱えるものなど、この陣営にはおりません」
私はただ、私の言葉に胸を痛めたようにも見えたあの人の様子を心に刻み、愚かで幸福な夢を抱く。 あの人もまた、私を想っていてくれたのだと。 確かな証など何もいらない。 私ひとりが抱えてゆく浅はかな夢。これさえあれば、後悔と喪失感に苛まれることなく、今後もあの人に仕えていけるはずなのだ。
「そう、か……」
だから、あの人の寂しげなつぶやきも、私の名をかたち作った静かなささやきも、私の心に鋭い棘となってつき刺さりはしなかった。 今こうして思い返す私の胸に、悲しみなど訪れて良いはずもない。
頬を伝い落ちた涙はきっと、過去となった私の想いを悼むために流れたのだ。
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わーお。悲恋ですって。わーお(無感動に)
そんな感じでアサナミにひっじょーに似合わないネタですが、諸般の事情からリハビリ代わりに。 冒頭書きながら、なんとなーく楽陽書いてたときのような気分になりましたが、ものの数行で別物と成り果てました。てかこの「私」、失恋(?)の痛手を癒そうとする方向がなんか間違っています。古いネタですが、動物のお医者さんの「欺瞞だ……自分を騙している」を思い出してひとりで笑ってました(酷)
恋といえば、騎士シリーズに恋愛要素を入れようかどうしようかたいへん悩んでおります。 薔薇さん単体エピソードでも入れれば男女のやりとりっぽくなるのでしょうが、なんか恋愛じゃなくて駆け引きとか詐欺(おい)とかになるのは目に見えてるし、あいつ対女性バージョン歯が浮きそうで駄目だ。 そして、薔薇さん以外で恋愛となると、長編並みの設定明かしが必要になるか、キャラが増えないまま(え?)かのどちらかに。
……でも、せっかく騎士モノなのに恋の一つも転がってないって、そんなの損ですよね……!!(堂々巡り)
2006年01月31日(火)
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