馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2002年06月30日(日) 『のんびり日報』〜素晴らしきのんびりやたち・4

稽古第8週、第42回。

最後の日曜稽古。
ふう。
本当に焦っても仕方がないのだなあ。
地道に1回1回の稽古を大切にするのがいちばんさ。

   ◆

本番を想定して通しを午前と午後とで2回やった。

ところで最近、通しの前にそれこそ30分くらい時間を取って役者に「自由に過ごせ」と指示を出すことが多い。
台詞を確認するもよし、体を動かして暖めるもよし。
実際の劇場でも、この時間をどう使うかが本番で大きくものを言ってくる。
自分のテンションをどうすれば高く維持できるかを探っていってほしい。
これは稲葉があーしろこーしろ言えることではない。

稲葉の友人で、べディック企画の舞台を含めて5回共演している中島弘臣殿はこの時間の使い方がとてもうまい。
彼の場合はひたすらに集中力を高めていく。
楽屋の椅子にじっと座り、目をつぶる。
体のまわりにオーラが漂い、近寄りがたいような迫力が出てくる。

彼の劇場入りしてからの行動はとても見るべきものがある。
本番を控えて何をすべきかをしっかりとわきまえている。
稲葉は彼を尊敬する。

本番直前の役者には近寄りがたいほどのパワーがなければならない。

   ◆

で、今日の通しだ。
結果を先に言えば、午前も午後もPK戦までもつれこんでの辛勝といったところか。

2度の所沢稽古の甲斐あって、nukushi・amp・箱・蓮殿は安心できるだろうと思っていた。
怖いのは連休だった中澤・ことめ殿である。

が、うん。
4人と比べると差が出てきたのは否めないが、芝居を崩すほどではなかった。
4人のテンションに引っ張りあげられたというのが正しいだろう。
とりあえず胸をなでおろす稲葉。
ふはあ。

にしてもだんだんアドリブも増えてきて活き活きしてきている。
結構なことだ。
もっともアドリブを出してくるのが箱殿。
ことめ殿もどこまで意図していたかわからないが、いいものを出してくる。

ただ惜しいのは、面白いとすぐに顔に出してしまうことだ。
どんなに良いアドリブが出ても、役者が舞台上で笑ってしまったらすべて台無しになっちゃう。
遊び心と緊張感の両立ができるといいね。

いい場面はちゃんとよくなっている。
のくせして、崩れるところは本当にどーしようもないほどに崩れてくれる。
緊張感の維持がまだ甘い。
稲葉がどうこう言うより、役者各人が意識するしかないところ。

   ◆

本番間近、現場の声。

神山馨子役・松永江里子。

本番10日前と聞いたとき、役をもらった時もコメントを書いたことを思い出した。
あの時は何だか理由(わけ)の分からない文章を書いてしまったが今回は普通にいこうと思う。

台詞が入るまではぎこちなかった演技が今ではかなり心に余裕が生まれてやり易くなった。
だからって気を抜いているわけでは決してないから。
今は小道具と格闘中だ。
6月25日に初めて(私だけ)小屋見に行った。
想像していたより小さく感じたし、実際演じる場所はもっとせまかった。
テンションは上がって当然。
自分がどこにいるのかが分かったから。
普段と違う場所にいるせいで多少の緊張は隠せない。
でも歩いていくと、ただの板張りの部屋にあの「空気」が蘇ってくる。
「熱い……!」
来週のこの日(水曜日=稲葉注)は仕込みで一日中芝居一色になる。
一週間は経つのがとても速いので今はそれに追いつくのに必死だ。
たぶん本番もそのノリで訪れるのだろう。
付いていってみせる。
まだまだ練習が必要だ。
残りの日々が輝いてみえる今、今日からの生活は少し変わるだろう。
いや、たぶん「変える」んだよ。

2002.6.26   Eriko


   ◆

松永に注目したのは軽井沢での合宿だった。
源斗班と稲葉班に分かれて芝居を創っていた。
amp殿とバカップルぶりを見せてくれた箱殿も、微妙絶妙な隠し味だった元地殿も面白かったが、舞台中央で1人、奮闘していたのが彼女だった。

彼女の素晴らしいところは思い切りの良さであろう。
毎年のことだが1年生、特に女の子ははじめ、堅い硬い殻に閉じこもっている。
照れがあるのだ。
何をやらせても思い切った演技にならない。
演出家はまず、あの手この手を使ってこの殻を破ることを強いられる。
箱殿やことめ殿には今でも殻が若干まとわりついている。

だが、彼女にはそれがない。
いや、無いといったら嘘になるが少なくとも自分からそれを破ろうとしていた。
3人いる1年生女優の中で、最も成長が速かった。
2年生の男優3人の馬鹿テンションに馴染んでいくのも速かった。

今回、敵役(…という表現は適切ではないが…)として、他の5人を相手にできるのは彼女をおいて他にない。

   ◆

舞台監督補佐・小松利光。

あっというまに十日前……早いもんです。

舞監補として「大野さんやみんなに協力できたのか?」とふと考えてしまう今日このごろです。
何にしても時間が経つのが早い!!! 早すぎる〜。
まだ何もやってない気がする。
大野さん見ていてください。
これから小松は今まで以上に頑張ります。
実力以上のものを出し死ぬ一歩手前まで走りつづけます。
そして7月7日を記念の日とすべく頑張ります。
ありがとうございます。


   ◆

謙虚だなあ。
彼の字は体から想像できないくらい小さくてきれいな字であった。

「大野さんやみんなに協力できたのか」……なぁにを言ってますか!
カウンターやイスができたのは誰のおかげ?
もっと胸張っていい仕事をあなたはしている。
ものすごく感謝している。

彼はワークショップや初期稽古のころ、頻繁に役者とともに舞台に上がっていた。
その前向きな姿勢が嬉しくて「ディベートしたいっす」の声を聞いて、何度となくディベート稽古をしたものだった。
言い出しただけあって、稽古の中でもたくさんの発言をしていた。
よく墓穴を掘ってもいたがねえ。

そしていよいよ稽古が本格化してくると彼は舞監補に徹してくれた。
大道具作りの中心になって動いてくれた。
その身の振り方というか潔さたるや。
縁の下のなんとやら……それに徹することはスポットライトを浴びるのに負けないくらいカッコイイ!

なお、彼のお父様というか実家というか、小松工務店さまからは膨大な資材の提供をしていただいた。
スペシャルサンクス筆頭である。
ものすごく感謝している。

   ◆

稽古後に青二菜にてnukushi殿の誕生会。
少ない人数ながら楽しく過ごす。
祝いを受ける側に回ったnukushi殿の不慣れさが面白かった。

ところで、稲葉が会長を引退した納会を行った「温野菜」がつぶれていた。
たった1度きりの納会。
すこしせつなかった。

本番まであと日!
そうか6月ももうしまいか。


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稲葉 馨

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