馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2002年05月11日(土) 稲葉、亡き曾祖母と見ゆ

芝居が動き始めてから最初の稽古休み。
雨こそ降りませんでしたがやっぱり冷えます。

曾祖母(ひいばあちゃん)の17回忌法要に出席してきました。

このばあちゃんの記憶があるのは、従兄弟の中では最年長の稲葉だけです。
幼少時たくさん遊んでもらい、とても可愛がってもらったのを覚えています。
もしかしたら稲葉の最も古い記憶かもしれません。

稲葉が死別というものをちゃんと認識したのもこのばあちゃんの死でした。
告別式の日に見た奇妙な映像が今も頭に残っています。

ばあちゃんの入った棺が焼き釜の中に納められ、重い扉がゆっくりと閉まっていきました。
このとき、棺の真横(真上かな)からの映像を見ました。
閉まっていく鉄の扉の向こうに親戚一同が並んでいました。
叔母の横に稲葉も立っていました。
数秒も無い一瞬の映像でしたが、妙にリアルにはっきりと見てしまいました。
お別れの直前に稲葉を抱いておきたかったのでしょうか。
とりあえずそう思っています。

そうですか、あれから17年ですか。

池上のお寺でお経を上げていただきました。
ここの寺には稲葉家はとても親しいお付き合いをしていただいています。
ちなみに日蓮宗です。
今日はいつものご住職の息子さんでした。
まだ若いのですが、しっかり修行されているのはよく伝わってきました。
仏さまがいらっしゃいますと言われると、本当にばあちゃんがいるような気配が…。
錯覚ですか。
でもいいじゃないですか。

焼香のときに祭壇を見据えましたがばあちゃんの姿は見えませんでした。
豪壮華麗な祭壇の隅でちっちゃくなってたのかもしれません。
ばあちゃんを見たこともない小さな従兄弟も、ばあちゃんのために焼香していました。
死後17年もしてこんなにも慕われているっていいなあ。

経をすべて読み終わった後、導師さまが日蓮宗のことや目の前の祭壇のことについていろいろお話してくださいました。
私は難しいことよく判らないんですが…とこん平さんばりの掴みでした。
さっきまでの厳かな表情とは打って変わって、とても穏やかな、ちょっとえなりかずきみたいな優しい顔になっていました。
源斗殿は教師は役者と似ているとよく言っていますが、導師僧侶もまた役者に近いものがあると思います。

にしてもここに渡月橋殿を呼びたかったなあ。

一族で昼ご飯を食べたあと、喪服のまま他劇団の稽古場に向う稲葉でした。


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