「生きていくのに大切なこと」こころの日記
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2008年08月17日(日) あるもの

 パソコンが動かない日曜日。雨降り前の空模様だが、思い切って外出モードに切り替えた。
 バータンハイ通りをしばらく行くと、バイクのみんなが道に止まっている。何かあるのかと思ったら、みんな合羽を着始めていた。向こうの空は灰色のレベルだ。準備の早さに感心しながら、現地の人の知恵を見習うのは私の知恵だ。合羽を着て走り始めて数分も経たないうちに豪雨が襲ってきた。
 通りはあっという間に水がたまり、雨しぶきが飛んでくる。こんな雨の中、私はどこへ行くの?!しかし帰ってもパソコンが使えない。見れば、雨で頭を洗うおじさんも居る。雨の日に外でもいい。今日は外の日だ。
 しかし道には迷わず動きたい。目的地を、前回断念したビンタイン市場に決めてゆっくり走った。
 途中2回左折したら、ビンタイン市場に着いた。でも今日は中には入らない。珍しいものを見ても買って確かめることもしない。市場の周りをぐるりと回ってホーチミン市5区の町並みを観察した。実は、今度はこのあたりに住んでみようかと思っているのだが、市場の回りは野菜くずなどが散らばっている。ということは、大きなねずみが多いだろうと改めて思う。
 帰りは川沿いを走った。この道もそのまま行くと知った通りに出る予定だが、ふと見ると、川の向こうにさっき見たばかりの景色が見える。いつの間にか違う道に入り込んだのだ。
 3回に分けて道を尋ねた。道の名前を聞いているつもりだが、少しも通じない。こんな場合、自分の尋ねたこと以外のことを聞こうとするとさらに路頭に迷う。「家の方向に近づいていればいいか」 と分かるところだけチョイスした。
 3回目の男の人は、「三つ目の十字路を左に曲がると小道がある。でも小道は行かないで、大きな道をまっすぐに行くと着くよ」と教えてくれた。「今度は合ってる気がする」。お礼を言って走ると、本当にその道に着き、庭のエリアに入った時の安心感は今までの「お尋ね人」に関するトラウマを解消した。
 市場に寄ってお昼ご飯を買い、次に自転車に乗ったままのスタイルで牛乳を買ったら、牛乳屋さんは牛乳を自転車のかごに入れてくれた。水溜りの道をそろそろ走ってようやく家に着いて、ちょっとした小旅行の満足感を味わった。
 ところが、自転車を駐輪して荷物を持ったら、買ったばかりのご飯がない。少ない荷物をひっくり返しても、ないものはない。お金を払った後、かごに入れたところまでは覚えているから…。「持っていかれたんだ!」
 ついに私にもこんなことが起きたんだと、今の今まで自分にはあり得ないと思っていた自分を感じながら、市場の様子を回想すると、普段より人が少ない市場にずぶぬれの自分は油断していたことに気がついた。
 財布と携帯を確認するのは癖になっているけれど、わずか10分の間にお弁当を確かめるのは怠ったのだ。
 しかし、原因は分かっても自分のために何かしたい。お昼ごはんもない。もしかしたら買った場所に忘れてきたのかもしれない。私は再び市場に向かって自転車をこいだ。牛乳屋さんでお店のおじさんと目が合った。私の心の中には「誰が持っていったの?」があるままだ。おじさんを見たまま視線をそらせずにいたら、おじさんは立って家の中に入っていった。それから、ご飯を買ったところに行って、お姉さんに聞いてみた。「さっき買ったごはん、忘れていませんでしたか?」お姉さんも知る由はなし。私は食べたかったものをもう一度買った。「カバンの下に入れてね」とお姉さん。本当にその通りだ。私はお弁当をカバンの中に閉まった。
牛乳屋さんの前を通ったら、おじさんの代わりにおばさんがいた。ここで何度か炭酸を買ったことがあるから、おばさんは私が外国人だと知っている。「ちょっと待って」と言って、ペンと紙を持って来てくれた。「かくかくしかじか。私はご飯を置き忘れていないか探しに来たんです。おじさんに聞きたいんです」
 おじさんはどこへ行ったか分からない。おばさんは商品の間を見て探してくれたがご飯は出てこない。私のほうも戻ってくるという予想はない。しかし自分に出来ることをしてあげたかった。おばさんにお礼を言って、帰ってきた。気持ちは、2回分の値段で食事をしたと思えていた。
 そういえば今日、ヘドロの前に洗濯物を干す人々の家の前を通った。ひどい臭いに、「自分はここには住めない」と思った。この国は日本とは違う。だから治安が悪くていいとは思わないがスリが横行することにも納得する。物がなくなっても、体が残っている。健康な体があることはひとつの能力だ。
 家に帰ったらパソコンが目に入った。電化製品でなくてよかった。財布も携帯電話も自転車も、今まで離れず手元に残っている。今のアパート暮らしも3ヶ月過ぎ、この場所に慣れてきた私に、「気を引き締めて・メリハリをと付けて」と声をかけてくれたんだ。知らない誰かさんにお弁当をご馳走した気分になった。


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