灰皿とハイライト - 2004年01月05日(月) あなたがいなくなったこの部屋は雑然としていて、 まるで生気を失ったような感じがする。 あなたはこの部屋にいなくてはいけない要素だったし、 あなたが居なくてはこの部屋は成立しない。 もちろん、私も成立しない。 あなたとの思い出が容赦なく私を飲み込もうとする。 あなたの優しさが私の右腕を引きちぎって、 あなたの臭いが私の左腕を食いちぎって、 あなたのぬくもりが私の右足をもぎとって、 あなたの笑顔が私の左足を切り落とした。 最後に残った私の胴体は、あなた自身が引き裂いてしまった。 結局、私という人間は何も残らなかった。 あなたがいないと、私の細胞の一つ一つが結びつかなくなるの。 あなたが残していった、まだ3本入っているのハイライトと、 シルバーのシンプルなZIPPO。 あと、大量の安いウイスキーは手切れ金代わりにもらっておくわ。 私の中であなたという存在は絶対に消えない。 ツタのように複雑に絡み合い、もう解けなくなってしまっている。 それでも、少しでも、ほんの少しでも、あなたのことを消してしまいたくて、 あなたの住所とTEL番が書かれたメモを、あなた専用だった灰皿で燃やしたわ。 メモ紙に安いウイスキーをかけて、持ち主を失ったZIPPOで火をつけたの。 マッチ売りの少女みたいに火の中にあなたのことを見て、 感傷に浸るなんてことはしなかった。 でも、火が放った暖かさがあなたの暖かさととても似ていて、 思わず泣いてしまった。 泣き終わった頃には火は消えていた。 なんとなくこの灰皿を供養したくなって、夜の海へ出かけたの。 30分ちょっとの火葬行列。 あれ?火葬行列って言わない? まぁ、いいや。 夜の海はとても静かだった。 堤防の上に昇って、海のほうにむかって「バカヤロー」と叫んでみた。 ちっともすっきりしない。 灰が入ったままの灰皿を投げ捨てようとしたんだけど、 海の底に沈んでいく灰皿の様子なんてものを想像しちゃったら、 なんだか切なくなっちゃった。 別に灰皿に同情したわけじゃないのよ。 どうしたらいいのかわからなくなって、その灰皿をつかって、ハイライトを3本吸って帰って来た。 たばこはまずい。 灰皿は近所の粗大ごみ捨て場に捨てた。 馬鹿でかいブラウン管テレビの上においてきた。 収集車が来るまでにはまだ時間がある。 もしかしたら、通りかかった人が拾って行くかもしれない。 それでもいい。 もうあの灰皿は、彼の手を離れ、私の手を離れたのだから。 この部屋から、あなたが吸い残したハイライトがなくなり、 灰皿も住所を書いたメモもなくなった。 そして、油のきれたZIPPOだけが残った。 油のきれたZIPPOはすっかり存在価値を失ってしまって、お気楽な隠居生活を送っている。 あなたのことを思い出すことが徐々に少なくなってきている。 最初は変に意識しちゃって悲しかったけども、今はそうでもなくなった。 むしろ、やっぱりあなたはずっとずっと私の中に居続けるんだってことを改めて思わされている。 う〜、ここまで書いて寝てしまった。 しかも、昼になってやっと気づいた(笑) と、言う訳で、これで終わり。 BGM:Shining ray/Janne Da Arc ...
|
|