日記のような語りのような。

2004年06月09日(水) 君といつまで7 <ランセイ>

「例え結果は同じでも、望むなら心の底から望んだ方が断然いいに決まってるじゃない」
「オリヴィエ先輩……」
「どうせこれからも同じようなことで悩むんだったら、今ここで決意しちゃった方が自分にいいと思わない?」

そうだ、とランディくんは思いました。
もし、オスカー先輩の留学の話を最初から聞いていたのなら、今日のような葛藤がないままにセイランを預かることになっていたはずです。
その場合、きっとランディくんはまた同じように悩むのでしょう。
再びの別れが訪れたとき、わかりきったことを繰り返し悩むのでしょう。
オリヴィエ先輩が本当に心配していたのは、もしかしたらこの可能性だったのかもしれない、とランディくんは思いました。

「嘘をつくな。どうせお前のことだ、面白いから黙ってただけだろう」
「あは。バレた?」

オスカー先輩の鋭いツッコミも、オリヴィエ先輩は笑って流します。

「いいじゃない。これにて一件落着、結果オーライってね」

そう云ってウインクするオリヴィエ先輩と怒ったような呆れたような顔で笑うオスカー先輩に、つられるようにランディくんも笑いました。
オスカー先輩の腕の中から、セイランが顔を上げてランディくんを見つめます。
蒼い瞳が、ただランディくんだけを見ていました。

「――」

ランディくんは手を差し出しました。
オスカー先輩の腕の中にいる、セイランの目の前に。
気づいたオスカー先輩もまた、少しだけ前に手を出します。
セイランは一度オスカー先輩を見上げ、またランディくんに視線を戻しました。

そうして。

するり、となんでもないことのように腕の中に収まった蒼は、初めて会ったときより少し大きくなっているものの、その瞳の強さは変わらなくて。

「セイランさん」

ぴくり、と耳を動かしてセイランがランディくんを見上げました。
そんな些細なことが、何よりも嬉しいのだと知ったのはセイランと暮らし始めてからです。
子どものように離れたくないと一心に願った、初めての特別な『誰か』。
それがこのセイランであって本当によかったと、ランディくんは心から思いました。

「こらからも、よろしく。――セイラン」


今はただ、このぬくもりを信じて。


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紗月 [MAIL]