日記のような語りのような。

2004年06月05日(土) 君といつまで3 <ランセイ>

「よう、久し振りだな、ランディ」
「先輩……」

目を見開いたきり、ランディくんは口を開け放していました。
その呆けた顔に、オスカー先輩は肩をすくめてからかうような笑みを浮かべます。

「おいおい、久々に会った先輩にお久し振りの一言もそれはないのか?」
「……あ、いえはいっ、お久し振りですっ!」

反射的に気をつけをするランディくんに、オスカー先輩は声をあげて笑いました。

「ああ、お前も変わってないようで嬉しいぜ」

やっぱりオスカー先輩だ、とランディくんは思います。
女ったらしだけど、いつも自信たっぷりで強い、ランディくんの尊敬する人。
外国をまわったことにより、さらに自信をつけたように見えるオスカー先輩は、やっぱりオスカー先輩でした。

「あ、お2人とも上がってください」

せっかく訪ねてくれた先輩たちを立たせっぱなしだということに気づいたランディくんは、お茶でもどうかと二人を部屋に促します。
勧められ、まずはオスカー先輩が部屋に上がります。
続いて玄関に入ったオリヴィエ先輩は、鍵をかけるランディくんにだけ聴こえる声で云いました。

「アンタ、大丈夫?」
「え……?」
「いやうん、平気ならいいんだ。平気なら」

ごまかすように手を振り、オリヴィエ先輩はオスカー先輩に続いて部屋に上がりました。
キッチンでお茶や軽いお菓子を用意して、部屋に入ったランディくんがまず見たものは、オスカー先輩の背中でした。
窓の方に向かって膝をついている広い背中。
――その向こうに、いるものは。

「お前と会うのも久し振りだな……」

テーブルにグラスを置きかけた手がぴくりと揺れました。
その様子を間近で見ていたオリヴィエ先輩が心配そうに眉をひそめたのを、ランディくんは知りません。
ランディくんはただ、オスカー先輩の背中を見ていました。
そして、そのオスカー先輩が見ている存在。
今この部屋にいるのは、ランディくんとオスカー先輩とオリヴィエ先輩と、そして――。

「セイラン」

空や海の色よりもっと深く鮮やかな蒼を腕に抱き、オスカー先輩が振り返りました。
ランディくんは息を呑みました。
ランディくんにとってそれは、セイランとの決別を告げる瞬間だったのです。


 < 過去  INDEX  未来 >


紗月 [MAIL]