日記のような語りのような。

2004年06月03日(木) 君といつまで2 <ランセイ>

セイランを抱きしめ、ランディくんはそのまま頭を抱えそうな勢いでうなだれていました。
頭の中で繰り返されるのは、先刻の電話で聞いたオリヴィエ先輩の声ばかり。

『オスカーが近々こっちに帰ってくるって』
『アンタたちのことも、アイツなりにずっと心配してたみたいだよ』

オスカー先輩が帰ってくる。
それはすなわち、セイランとの別れを意味していて。
けれど元々、セイランはオスカー先輩の猫なのです。
ランディくんは、外国に行ってしまったオスカー先輩の代わりにセイランを預かり育てていただけであって、セイランはランディくんの正式な飼い猫ではないのです。

「わかってたよ、そんなこと……」

いつか別れのときがくると、そんなことは最初から承知でした。
けれど、一番初めに覚悟したはずのそれがいざ目の前にくると、嫌で嫌でたまらないと思ってしまうのはなぜなのでしょう。

オスカー先輩の帰国は、純粋に嬉しいと思うのに。
オスカー先輩に会って、向こうでの話をたくさん聞きたいとも思うのに。

なのにどうして、再会の喜びよりも別れのつらさがより大きいと感じてしまうのでしょうか。
いつの間に、セイランの存在はランディくんにとってこれほど大きくなってしまっていたのでしょうか。


オリヴィエ先輩の電話があってから数日後のことでした。

「や、ランディ」
「……急にどうしたんですか?」

玄関の前で小さく笑って手を上げるオリヴィエ先輩に、ランディくんはただ驚いていました。
遊びにくるときは必ず連絡をくれるオリヴィエ先輩がなんの連絡もなしに訪ねてきたのです、驚かないわけがありません。

「いや……ちょっと様子見にね、寄ってみたんだけど」

いつもと違う歯切れの悪い物云いに、ランディくんはますます首を傾げます。

「あ……あのさ、ランディ」
「はい」
「実は、この下でばったり会っちゃってさ」

何と、と問うまでもありませんでした。
オリヴィエ先輩の横から現われた懐かしい顔。
燃えるような赤い髪、凍るように澄んだ青い瞳、男でも見惚れてしまうほどの整った顔立ち。

「オスカー……先、輩」


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紗月 [MAIL]