日記のような語りのような。

2004年06月01日(火) こんな1日も 2 <ラウ>

同じベランダに黒と蒼と白が並ぶというのは視覚的にどうかと思わないでもなかったが、いつからかそれは自然とそこにあった。

「そういえば、ランディといったか、お前の飼い主の。最近はどうだ?」
「どうともしないね。気になる女の子がいるとかいないとか悩んでいるみたいだけど。どうせいつもどおりに玉砕だろうから、放っておいてるよ。そっちはどう? 中尉に昇進するとか云ってなかった?」
「ああ、昇進云々はデマだったらしいな。そもそも、こちらには研修に来ているだけでなんの功績も挙げていないのだから当然だろう」
「だろうね。やっぱりあの人が人の上に立つのはどうも想像がつかないよ。癖のある上司の下でこき使われてる方がイメージに合うくらいだ」

容赦のない物言いに、けれどここにはそれを咎める者はいない。
ぼんやりと濃く色づいた木々の葉を眺めながら、特に認識するでもなくただ耳に入る音たちがあった。
それだけのことだった。

「最近の缶詰は味は良いけど質が下がっている気がするよ」
「そうか? 私はそうとも思わんがな」
「同じ品でも少し味が違うんだ。以前好きだったものでも、今はあまり口にしないものもある。まぁその辺、一応あの人もわかってきてるみたいだけど」
「お前はな、それでいいだろうけれどな。私のところなどはハボックが好き勝手に買ってくるものだから選択肢も何もないのだぞ? ……まったく、旨くもない缶を食わせるくらいなら貴様の食べているものを寄越せとどれほど云いたいか」

なにが楽しいのか、彼らの話題は尽きないらしい。
もうそろそろ雑音に飽きてきたかと思い始めたころ、覚えのある音が耳に入り、思わず尻尾が揺れた。

「君のところはどうだい? ……ラウ?」

身体を起こし、首を傾げている蒼の横を通り過ぎると部屋に上がった。
玄関の向こうから、一定のリズムで階段を上がる音がしていた。

『ただいまー。お、ラウ、ちゃんと留守番できたか?』

開口一番に抱き上げられ、頭を撫でられる。
開け放したベランダの窓を見、奴はどこか納得したように頷いた。

『ああ来てたのか、ロイにセイラン。上がれよ、ミルクくらいはおごってやるぜ?』

沈黙は了承。
なんの遠慮もなく部屋に上がる姿もまた日常茶飯事で。
抱き上げられたままキッチンへと向かうことになった私に届いた言葉がいくらか。

「……結局は、めろめろということか」
「だろうね」


当然、そんな言葉を私が聞くはずがない。


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紗月 [MAIL]