日記のような語りのような。

2004年05月28日(金) さよなら、大好きなひと。6 <ハボロイ>

その後、ヒューズさんから積極的にロイの話をすることはありませんでした。
けれどロイは始終ヒューズさんの傍にいて、ヒューズさんもよくロイを撫でて、ハボックさんがロイの話をすれば楽しそうに笑っていました。
職場の話や最近の出来事、果ては昨日の夕食のことにまで話が転がり、めいっぱい買いこんだお酒がなくなった頃、ヒューズさんは小さく肩をすくめました。

「んじゃあ俺、そろそろ帰るわ」
「はい。……って、うわっ、もうこんな時間じゃないですか。電車とか大丈夫っスか?」
「……あんまり大丈夫じゃねぇな。というかマトモに帰れるかどうかの方が怪しい。つーわけで、悪い少尉、タクシー呼んでもらえるか?」
「っス」

流石はヒューズさん、酔っていても自分の身体のことはしっかりと把握しているようです。
同じように酔っているハボックさんは、よろよろと身体を動かし電話の子機を取りあげました。
電話の乗っている棚の中から電話帳を探しだし、タクシー会社の番号を見つけ、ボタンを押していきます。
ふと横目にヒューズさんを見ると、ヒューズさんはロイに顔を近づけて何事か呟いていたようでした。
受話器の向こうで、妙に元気のいい男性がタクシー会社の名を告げてきます。

「あ、タクシーを一台お願いしたいんですけど」


タクシーは10分ほどで着くと云われ、それに合わせてヒューズさんは帰る準備をしました。
ハボックさんは、ロイを腕に抱いてアパートの下までお見送りをします。
タクシーがアパートの前に止まり、扉を開いて乗客を待っていました。

「少尉、今日は楽しかった。ありがとうな」
「はい、こちらこそありがとうございました」

ロイはずっと、ヒューズさんを見つめていました。
それに気づいたのか、ヒューズさんはロイの頭を大きな手のひらでゆっくりと撫でます。

「――それじゃあ、また」

そう云って、ヒューズさんはタクシーに乗りこみました。
行き先を告げ、座席に腰を落ち着けたヒューズさんがハボックさんの方を見、少し笑ったところで車は発進します。
思わず頭を下げ、タクシーを見送るハボックさんの腕からロイがするりと抜けだし地面に降り立ちました。

「……大佐?」


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紗月 [MAIL]