日記のような語りのような。

2004年05月24日(月) さよなら、大好きなひと。2 <ハボロイ>

「美人と同棲してるって?」
「……はぁっ!? なんスかそれ」
「こっちじゃもっぱらの噂だぜ? 『ハボック少尉が黒髪の美人と同棲してる』って。あと、相変わらず尻に敷かれてるってのもな」

とんでもない台詞に、ハボックさんは怒っていいのかどうなのか本気で悩んでしまい
ました。
まさか本当に黒髪の美人と自分が同居していると思われているのでしょうか。
黒というからにはそれはおそらくロイのことなのでしょうが、なぜ猫と自分が「同棲」することになるのだろう、とも考え、ハボックさんは頭を抱えそうになってしまいました。

「……あの、同棲も何も、相手は猫ですよ?」

このとんでもない勘違いをどう正そうかと思いながらも、とりあえず直球でハボックさんは勝負してみます。
けれど、やはりハボックさんよりヒューズさんの方が一枚上手で。

「んなこた知ってるさ」
「はい?」
「だから云ったろ、噂だってさ。あの少尉が黒猫飼ってるらしいぞー、とな」

あっさりと云い放つヒューズさんに、ハボックさんはがっくりと肩を落します。
そんなことだろうと思えばいいものを、なぜあんな慌てさせてくれるような言い方ができるんだろうこの人……と、ある種の尊敬すら抱いてしまうのがこのヒューズさんなのです。

「ま、こんなところで噂話もなんだ、どっかで一杯やってかないか?」
「いいっスね」

頷いて、けれどハボックさんは「あっ」と思いました。
家にはロイがいるのです。
いつも仕事で多少遅くなっても平気ではありましたが、気心知れた人とこのまま飲みに行ったら一体何時に帰れるのかわかったものではありません。
なのでハボックさんは、ここでひとつ提案してみました。

「なんなら俺の部屋来ませんか? この近くなんで」
「おっ、それもいいな。噂の美人にも会えるだろうし」

ヒューズさんがあっさりと頷いてくれたことに、ハボックさんは内心安堵しました。
そして二人は、ハボックさんの家へと向かって歩き出しました。

「そういや、その猫はなんて名前なんだ?」
「ああ、ロイです」
「――ロイ?」
「ええ、最初からロイ・マスタングって名前がついてました」


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紗月 [MAIL]