日記のような語りのような。

2004年05月05日(水) 君を追って3 <ムウラウ>

まさかそうくるとは思わなかったのか、最初きょとんとしていたランディくんでしたが、すぐに合点がいったのか「ああ」と頷きました。

「あの子、フラガさんの猫なんですか。ラウっていうんですね? ええ、来てますよ。よろしかったら上がりますか?」

願ってもない申し出に、ムウさんは二つ返事でランディくんの部屋に上がりました。
ムウさんの部屋となんら変わりない造りの部屋でしたが、現役の高校生らしい雰囲気の部屋の中には、しかしよくよく見ればあまり似つかわしくないものがいくつか転がっていて。
それが猫用のオモチャなどだと気づくのに、そんなにはかかりませんでした。

「ほら、あそこです」

ランディくんの示した方をみると、なるほど確かにベランダにはラウがいました。
そして、ラウの傍らにはもう1匹、蒼い猫がいて。

「あの猫は、君の?」
「はい、セイランさんっていうんです」

2匹は何をするでもなく、外の風景を見ているようでした。
時折、セイランがラウを観察するようにじっと見つめていたりもしていたようですが、ラウは特に気にしている様子もなく、そこには穏やかな時間が流れていました。

「少し前から、たまにラウさんが遊びに来ていたようなんです。どこから来てるのかわからなかったんですけど、そっか、フラガさんの猫だったんですね」

そうだな、と笑顔を浮かべながらも、ムウさんの視線はラウから離れることはありませんでした。
おそらく初めてであろう、ラウの友達。
ラウには自分しかいないなどと、そんなことを考えていたわけではないのだけれど。
やはり少し寂しいなどと思ってしまうのは、親心(のようなもの)なのでしょうか。

「セイランさんは、いつもひとりだったから……」
「え?」
「ラウさんがいてくれて、よかったと思います」

あ、とムウさんは思いました。
ランディくんには学校が、ムウさんには仕事がある以上、セイランもラウも昼間はほとんどひとりで過ごしていることになります。
いくらひとりが好きだといっても、ずっとひとりきりなのはやっぱり寂しいと、ランディくんは云いました。

「そっか……そう、だよな」

ラウも寂しかったのかもしれない、とムウさんは思いました。
普段はあまり感じないけれど、ラウだってまだまだ小さいのです。
昼間ずっとひとりきりでいて、なんとも思わないわけがない、とムウさんは思います。
そんなラウに友達ができて、こうやって少しずつ楽しいことを増やしていけるのなら、それはきっと素晴らしいことでしょう。

「これからもよろしくな、ランディ」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」

2人の飼い主は顔を見合わせて笑いました。
そうして視線を移した先には、愛しい2匹の猫の姿。


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紗月 [MAIL]