日記のような語りのような。

2004年05月03日(月) 君を追って2 <ムウラウ>

ラウがこの家のベランダから隣のベランダへ出て行ってしまうなどということを初めて見たムウさんは、ラウの後を追うように慌ててベランダに出ました。
手すりに乗り上げるようにして隣の家のベランダを覗くと、ラウはさらにもうひとつ隣の家へと入ってしまいました。

「なにしてんだ、あいつ……」

思わず呟いて、ムウさんは隣の家とさらに隣の家との間の仕切りをじっと見つめますが、ラウが出てくる様子はありません。
その部屋はこの階の一番奥の部屋なので、出てこない以上ラウがそこに留まっているのは明らかで。
一体どうしたのだろう、と考えますが、初めてのことで何が何だかわかりませんでした。

「追ってみるか? ……でもいきなりお宅のベランダ見せてくださいなんて不審すぎるだろうよ、なぁ?」

誰にともなく同意を求め、ムウさんは唸ってしまいました。
ラウの動向を知るのは、飼い主として当然のことです。
ましてそれが、他人の家に入ってしまうようなことになればなおさら。
まさかとは思いますが、もしラウの身になにかあったらと考え、ムウさんはどきりとしました。
ラウはとても珍しい(らしい)猫ですから、もしかしたら誰かに攫われてしまうなんてこともあるかもしれなくて。
もしも、の話ではありますが、絶対ない、とも云いきれなくて。

「……ちょっと、様子見てくるか」

そうと決めたら、ムウさんは早いです。
早速、隣の隣の家に向かったムウさんは、迷うことなく呼び出しのチャイムを鳴らしました。
そういえば最奥のこの部屋には高校生の男が住んでいたっけかな、と記憶を呼び起こしながら、待つこと数秒。
部屋の扉を開けたのは、記憶どおりの高校生の男の子、ランディくんでした。

「こんにちは。……ランディくん、だよな?」
「はい、そうです。えっと……」
「フラガだ。隣の隣に住む、ムウ・ラ・フラガ」
「ああ、こんにちは、フラガさん」

迷いのないランディくんの笑顔にムウさんは少し驚きましたが、すぐに気を直して本題に入りました。

「突然で悪いんだけど、うちのラウ――白い猫が、こっちの家にこなかったかい?」


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紗月 [MAIL]