日記のような語りのような。

2004年04月30日(金) 君のためなら6 <ランセイ>

オリヴィエ先輩とラウがそれぞれ帰った後、ランディくんはぼんやりとテレビを見ていました。
傍らではセイランが丸くなっていて、ゆっくりと尻尾を揺らしています。
テレビからセイランに視線を移し、ランディくんはセイランの頭を撫でました。
こんな風に触れてもセイランが嫌がらなくなったのは、つい最近のことです。

「でもやっぱり……なんかなぁ……」

昼間の、オリヴィエ先輩とラウとのやりとりを思い出し、ランディくんは小さく溜息をつきました。
あんな風にラウに触れられたことは、ランディくんにもありませんでした。
もちろん、ラウにとってオリヴィエ先輩はどこかしら気に入るところがあったからああなったのだろうとは思うのですけれど。

「うらやましいっていうか……ずるい、って思うのはどうしてかな……?」

そしてもうひとつ。
あの場面で、ランディくんを襲った気持ちはもうひとつありました。
あのとき、なぜかラウとセイランを重ねて見てしまったために現われた気持ち。
ラウはムウさんの猫だからこそオリヴィエ先輩は軽く諦めて――というか、最初から本気で連れ帰る気はなかったでしょうが、あれがもしセイランだったなら。
オスカー先輩は、元々はオリヴィエ先輩に猫を預けるはずだったのです。
その猫、セイランがもしも、ランディくんよりオリヴィエ先輩を気に入ったとしたら。

「オレに止める権利なんて、ない」

思わず呟いて、ランディくんは気づきました。
自分がどれほどセイランを好きかということに。
そして思いました。
オスカー先輩が帰国したら、自分は笑ってセイランを返せるだろうか、と。
わずかに芽生えた不安は、考えるほどに大きくなっていくような気がして。

「……セイランさん?」

手の中のセイランが、ふと顔を上げてランディくんを見上げました。
親指で鼻の辺りから頭までを撫でると、気持ち良さそうに目を閉じます。
――まだ、大丈夫。
もしかしたら、セイランの蒼には心を鎮める力でもあるのでしょうか。
その蒼が今ここにいるのが嬉しくて、ランディくんは撫でていた手でセイランを持ち上げるとぎゅっと抱きしめました。


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紗月 [MAIL]