日記のような語りのような。

2004年04月29日(木) 君のためなら5 <ランセイ>

「……え?」

オリヴィエ先輩にひょいっと抱き上げられるラウを見て、まさか、とランディくんは自分の目を疑いました。
ラウは、ランディくんが見ている限りではあまり積極的な猫ではありませんでした。
自分から好き勝手な行動をすることはあまり(というか全く)なく、それと同時に何かを嫌っているそぶりもほとんどみせないのです。
だから、抱き上げれば確かにそのまま抱かれてくれるのですが、それにはあくまで「抱かれてやっている」という雰囲気が見てとれて。
ラウが自分から寄ってくるなんてことは、ランディくんの経験にはないことだったのです。

「へぇ、こっちの子は素直じゃない」

こちらもラウの行動に驚いたのか、先刻はオリヴィエ先輩を無視していたセイランもオリヴィエ先輩の足元でラウを見上げていました。
一人と一匹に見つめられ、オリヴィエ先輩もこの事態がどれほどのものか把握したようです。
ラウの頭を撫でながら、その青い瞳を覗きこみました。

「アンタ、そんなに私がいいの? なんならもらってってあげようか?」
「オ、オリヴィエ先輩!?」

目を丸くするランディくんに、オリヴィエ先輩は気づかないフリをして続けます。

「静かにしてれば猫くらい飼ってたってバレやしないだろうしね。アンタ大人しそうだから、その資格はじゅーぶんあるでしょ?」
「で、でも先輩、ラウさんはムウさんの猫で……っ!」

本気に見えるオリヴィエ先輩の様子に、ランディくんは慌てて止めに入ります。
けれど、気づけばオリヴィエ先輩はくすくすと笑っていて。
そのときやっと、ランディくんは自分がからかわれていたということに気づきました。

「オリヴィエ先輩っ」
「くくっ、ああごめんごめん。だってアンタがあんまり必死だったもんだから、つい、ね」
「ついって……もう……」

呆れたような溜息が少し零れましたが、それが笑顔に変わるのはすぐのことでした。
けれど、なにかが胸に引っかかるような感じがするのもまた、気のせいではありませんでした。


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紗月 [MAIL]