※『仔猫物語。』本編とは無関係です。
<陽のあたる場所> その3
「セイラン」 「おや、何かご用ですか、ジュリアス様?」
珍しく感性の教官の部屋を訪れた光の守護聖は、相変わらずなセイランの態度にわずかに頭に血が上りかけた。 が。 何度目かに訪れたセイランの部屋の様子がそれまでとどこか少し違うように感じたジュリアスは、わずかに首を傾げるとふいに足元に目をやった。 そうして、気づく。
みゃあ 「――!」
セイランの足に仔猫がすり寄っている。 ジュリアスは、その猫に見覚えがあった。
「この猫は、ランディたちが庭園で――」
ジュリアスの声を遮ってセイランは笑った。 そうして腰を屈めると、小さな猫に手を差し伸べ、その身体を抱き上げる。
「自分の手元に置けないからと都合のよいときだけ構うなんて人間の傲慢だ。それなら最初から放っておけばいい。そうは思いませんか?」
彼の真っ直ぐな瞳にジュリアスは驚嘆した。 ――中途半端な気持ちならば最初から関わらなければいい。 セイランが言葉に込めた想い、その本当の意味にジュリアスは気づいた。 セイランは決して、生半可な気持ちでこの猫を連れてきたわけではないのだと。 そうして、その顔に広がるのは、笑み。 思いもかけないできごとでありながらも、ジュリアスはつい嬉しくなって顔を綻ばせた。
「しばらく、ここに来ても良いだろうか?」 「……?」 「この猫の様子が見たい。そなたのところであれば、安心だ」 「ええ、もちろん構いませんよ」
セイランが、声をたてて笑う。 その腕には、小さな仔猫。
――ありがとう ありがとう ――ぼくはいま とても幸せです
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