日記のような語りのような。

2004年04月22日(木) ひと休み。2

 ※『仔猫物語。』本編とは無関係です。


  <陽のあたる場所> その2

……あれ? ここ、どこ?

目が覚めると、そこはぼくの知らない場所だった。
箱の底とは比べ物にならないふかふかしたものの上に、ぼくはいた。

「気分はどうだい?」

いきなり、頭の上から声がして、気づくと、すごく綺麗な顔がぼくの目の前にあった。
昼間の空と、夜の空を混ぜたような蒼い髪の、真っ白な肌の人。

「まさか本当にランディ様たちが――」

え?
わけがわからなくて彼の綺麗な蒼い目を見上げると、その人はぼくの喉を撫でて苦笑した。

「何でもないよ。それよりここは僕の部屋なんだけど、居心地はどうだい?」

居心地? そんなの決まってるじゃないか。
冷たい箱の底に比べたら、ここは天国だよ。
その人は、優しい目でぼくを見ていた。
しばらく、ぼくの喉や頭や背中を撫でてくれたけど、ふいにその人は立ち上がった。

――どこへ行くの?

ぼくは、その人を呼んだ。

ねぇ、あなたも、みんなと同じなの?

――嫌だよ。

ひとりは嫌。そうだよ、認めるよ。怖いんだ。
ひとりになると、もう誰もぼくの所に来てくれないんじゃないかと思うんだ。
だからお願い、ぼくをひとりにしないで。
ぼくを置いて行かないで。

ぼくはその人を必死に呼んだ。
名前なんか知らないけど、だけど――。

「どうかしたのかい?」

……戻ってきて、くれた?
ぼくの声が、届いたの?

その人は、そこにいた。
でも、確かにさっき部屋を出て行ったはずなのに。

「全く、美味しいものを食べさせてもらっただろうから、君の口に合いそうなものといえばミルクしかないのだけど、いいかな?」

そう言って、その人はぼくの目の前にミルクの入ったお皿を置いた。
熱くはない、あったかいミルク。
あまいあたたかいミルクを、ぼくは夢中になって舐めた。
そうするとどうだろう、身体の中までぽかぽかしてきて。
すごくすごく眠くなって、そのままそこに身体を横たえた。

このミルクは不思議だね。
ぼくの心まで、あったかくなったみたいだ。


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紗月 [MAIL]