日記のような語りのような。

2004年04月17日(土) 君のいる風景3 <ロイ&??>

初めて出たベランダは、思ったよりも広かったようだ。
そもそも世にいうベランダがどれほどのものなのか、一般的なことは知らないけれど、私から見ればそこそこ広いように感じる。
……あのばかでかいハボックを基準に見れば手狭なような気もするが。

ベランダには、隣の家とこの家を隔てるためか両端に仕切りあがる。
おそらく水通しをよくするためだろう、下のほうにはいくらか隙間があった。
ベランダにはまた外に出られないよう壁があった。
壁は下側と上の一部がくり抜かれているような形で、その下の方からは外の風景が見える。
直接外を見るのは久し振りか。
この家に来てから、ほとんど窓越しにしか外の風景を見た覚えがない。
というより、外に興味がほとんどなかったのもあるのだろう。
今まで、外に出たいと思ったことはほとんどない。
自由でいたいと考えたことがないわけでもないが、だからといって一時的な好奇心以外で外での自由を望んだことはなかった。

さてあの影は一体何だったのだろう。
最初の疑問を思い出し、私はベランダを見回した。
このベランダには、影になるようなものはない。
外からの侵入者だろうかと考えるが、やはりこの位置だと鳥くらいしかここには入れないだろうと思う。
ふむ、ともう一度見回し、私は隣家との仕切りに目を向けた。
この仕切りならばどうだろう。
けれど、この隙間では大抵の生き物は通り抜けできないだろうと考え直した。

そう、このとき私はすっかり見落としていたのだ。
大抵の生き物は無理であっても、自分と同程度の大きさであればそこをくぐることは可能だということに気づいていながら。
――自分と同程度の大きさの生き物が、他の家にもいるという可能性を、なぜか意識から外してしまっていたことに。

「……おや?」

ふいに後ろの方から声が聞こえ、私は驚いて振り返った。
そこにいたのは、蒼い猫。
私と同じほどの大きさの猫は、私の姿を物珍しそうに眺め、蒼い瞳をくるりと楽しげに光らせていた。


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紗月 [MAIL]