日記のような語りのような。

2004年04月05日(月) 窓辺の君と3 <セイ&?>

ラウと呼ばれた彼はやっぱり答えない。
けれど、彼の名が「ラウ」だというのは間違いないだろう、そう思った。
違うことなら違うとはっきり云うタイプに思えたから。
……どうでもいいことなら完全無視、なんてことも軽くやってのけてそうだけど。

「お前の家は、そこか?」

突然の問いに、おや、と思ったけれど彼――ラウは相変わらず外の風景を眺めていて。
質問の意図が全く読めない。
別に構わないけれど。

「そうだね、僕の家はあそこだ。それはもう決まってしまったことだし、今さらそれを覆す気もなければ逃げる気もないよ」
「諦めたということか」
「諦め? ……ちょっと違うかな。そりゃあ確かに、今の主人を選んだのは僕ではないけれど、僕が僕らしく生きる場所を与えられている、僕にはそれだけで充分だ」

ラウはまた少し尻尾を揺らした。

「君は違うのかい?」

真っ直ぐでとても綺麗な猫。
汚れがついたことなど今までなかったかのように真っ白な毛皮は頻繁に身体を洗ってもらっている証拠だろう。
さらにしっかりとブラッシングまでしてあるところをみると、余程可愛がられているのだろことが容易に想像できて。
ブラッシングのブの字も知らないうちの主人とは大違いだ。
そんな彼が、どうしてそんなことを気にするのだろうか。

「……そうでありたいと望んだわけではない」

ああ、と僕は思った。
そういう感覚は、僕にも覚えがある。

「――なるほど」

意地が悪そうにわざとらしく呟くと、気に触ったのかラウはぴくりと耳を揺らす。
やっとこちらを向いた青に、僕は少しだけ満足した。

「確かに僕らは、野良でない以上は誰かに飼われていることになる。
どんな人間であれ、僕らは飼い主を選ぶことはできない。それは当然だ」

そう、僕の今までの経験からだって断言できる。
いつだって僕らは人間の勝手で主人を住処を生活を変えられてしまう。
望んでも、望まなくても。
――けれど。

「けど、本当にそうかな」


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紗月 [MAIL]