| 2004年04月04日(日) |
窓辺の君と2 <セイ&?> |
それは僕と同じ猫だったようだ。 見たことのない顔だな、と思ったけれど、よくよく考えてみれば当然のことだ。 僕はここに来てから、ランディ以外の誰かに会ったことがない。 真っ白な猫は、僕のことをじっと見ていた。 僕もそのまま見返していたから、なぜか僕らは自然と見つめ合っていて。 こういうのも面白いかもしれないと思い始めたとき、彼はふいっと部屋の中に目を向けた。
「ここはお前の家か?」 「いや、僕の家はこの隣さ」
彼はそれ以上に関心を持たなかったようで、今度はベランダの外へ視線を移す。 まっさらな空、立ち並ぶ家々、所々に見える緑、道を歩く人。 そんなものを見ているのだろうか。 そういえば僕も、初めてこのベランダに出たときはそうやって色々なものを見ていたことを思いだした。
「僕の名はセイラン。――君は?」
ふと問うてみたけれど、彼は聞いていないのか聞かなかったふりをしているのか、外の風景を見るばかりでこちらに意識を向けようともしない。 そういうのは嫌いじゃないけど。 今は少し、面白くない。 僕は彼にかなりの興味が沸いた。
僕は彼を見ていた。 彼は外を見ていた。
どれだけの間、そうしていたか知れない。 いつだって何かに熱中していると時間を忘れるから、今さら気にはならないけれど。 けれど、それほど長い時間ではなかったような気がする。
どこからか窓を開く音が聞こえ、僕はびくりとした。 振り返ったけれど、このベランダの窓は開いていない。 ランディはまだ帰宅時間ではないはずだし、だとしたら、このさらに隣の家だろうか。
『ラウ?』
僕の予想は当たっていた。 隣の家から聞こえる、困ったような声。
『ラウ、ラーウ』
おそらくは大人の男だろう。 ランディよりも低い声から僕はそう判断した。 僕の目の前の白猫は、けれどやはり無反応で。
『……ったく、どこ行ったんだあいつ』
そう呟いて、声の主は窓を閉めたようだった。 僕の前には、白い猫が何も云わずに佇んでいて。
「ねぇ」
彼の白い尻尾がぴくりと揺れた。
「君が、ラウ?」
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