日記のような語りのような。

2004年04月03日(土) 窓辺の君と <セイ&?>

僕の朝は、ばたばたと騒がしい足音から始まる。
もちろん僕の足音なんかじゃない。
家主であるランディが、朝早くから学校へ行く準備をしているだけだ。
ブカツのために彼はいつもとても早く起きる。
別にそれ自体は構わない。
けれど、どうして朝起きてご飯を食べて身支度を整えるだけなのにあんなにうるさいのだろうと思ってしまうのは仕方ないことだと思う。
本人は静かにしようと心がけているようだけど、下手に気を使うせいで、移動するときに限って無意識にたててしまう足音がさらに大きく聞こえるということに気づいていないのだろうか。
だから大抵、僕はランディが起きたすぐあとには目が覚めているのだけど、やっぱり眠いから彼が出かける直前に僕に声をかけるまではうとうととしている。

「それじゃあセイランさん。行ってきますね」

返事の代わりにしっぽを揺らす。
ランディが家を出て、やっと家の中が静かになった頃に僕はゆっくりと起きだした。
キッチンには、多めのミルクが入ったお皿と、エサの入ったお皿が何枚か。
僕がどれを食べたくなるかわからないから、いくつかのお皿に入ったエサは全て別の種類だ。
今までの主人のように、僕が食べるところに居合わせることがないためにこういった処置をとっているのだけど、彼にしては良い考えだと思う。

いつものように部屋の中で気になるものに触れたりぼんやりしたりして時間を過ごしていたけれど、昼が近くなってなんとなく暇になった。
だから僕は、外に出てみることにした。
ランディは家を出るときは必ず窓を僕がやっと通れるくらいの隙間分開けていく。
その窓からベランダに出て、外の風景を見るのが好きだ。
部屋の中からも空は見えるけれど、もっと下にあるものは見えないから。
かといって、別に下に降りたいわけじゃないんだ。
降りようにも、ここからじゃ足場がないから降りられないし、それに僕の家は――ここだから。

大抵はこの家のベランダから外を見ているけれど、最近の僕にはもうひとつの楽しみ方がある。
隣の家とこの家のベランダを区切っている仕切りの下の部分、そこを通って隣に侵入することだ。
隣室に住む人間も、ランディと同様に昼間は出かけているので、ベランダに少しお邪魔したくらいでは誰も気づかない。
いつも薄いカーテンがかけられたままだから部屋の中はよく見えないけれど、それなりにきちんと整理されているらしいことはわかる。
几帳面な性格の住民なのかもしれない。
そんなことを考えながら、人様のベランダでのんびりとしていたから、いつの間にか現れたそれに気づくのに数秒ほど遅れてしまったようだった。

僕の住む家の隣のさらに隣の部屋のベランダ、仕切りの下の部分からひょっこりと覗いている白。
白の中にある、ふたつの青。

思わず、綺麗だな、と思ってしまったけれど、あえて口に出すことはしなかった。

「……やあ」

こっちを見ているようだったのでなんとなく軽い言葉を返してみたら、無言でこちらにするりと抜けてきたのは全身真っ白な猫だった。


 < 過去  INDEX  未来 >


紗月 [MAIL]