日記のような語りのような。

2004年03月29日(月) 君がいるから4 <ムウラウ>

帰宅したムウさんは、既にラウの定位置となったクッションを覗きこみ、ラウの様子とエサ用のお皿に残ったエサの量を確認するとキッチンへと足を向けました。
自分とラウのための夕食を作るためです。
今日もラウは少ししかエサを食べていないので、何か食べやすいものをと台所で少し考え込んでいたムウさんの背中を、ラウが見つめていました。
ラウも、何かがおかしいと気付いたのでしょうか。
ムウさんはいつも、帰るとすぐにラウのところへ来て頭を撫でていきます。
けれど今日は、手を伸ばしはしましたが、気配に気付いたラウが頭を上げ、そのとき頭に指が触れるとびくっとして手を引っこめてしまったのです。
何気なくラウが見つめる前で、ムウさんはいつものように夕食の準備をします。
温めたご飯にスープ、簡単なおかずを並べて黙々と食べるムウさんをしばらく眺めていたラウでしたが、飽きたのか目の前に置かれたミルクに口をつけました。

「……ラウ?」

ムウさんがぽつりと呟いたのは、夕食を食べ終えお風呂にも入ったあと、ソファに座ってぼんやりとテレビを見ていたときでした。
いつの間にか、ラウがムウさんの足元にいるのです。
ムウさんと一緒にお風呂に入ったためふわふわになった身体をすり寄せるように、ラウはムウさんの足の間をすり抜けました。
ラウがこんな風に自分から近寄ってくるのは初めてのことです。
思わずまじまじとラウを見つめていると、ラウがちらりとムウさんを見上げました。

「――」

ラウから視線を逸らすことのないまま、ムウさんはゆっくりと足元に手を伸ばしました。
目の前に下ろされた手を見、もう一度ムウさんを見上げると、ラウは前足をムウさんの手に乗せました。
それを見届けたムウさんは、すくうようにラウを持ち上げると自分の足の上に下ろします。
柔らかな毛を撫でつけても、ラウは嫌がるそぶりを見せません。
じっとムウさんを見つめたままのラウに、ムウさんは静かに笑いました。

「ちゃんと、決めなきゃな……」

自分のこと、ラウのこと、これからのこと、全てを――。


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紗月 [MAIL]