日記のような語りのような。

2004年03月28日(日) 君がいるから3 <ムウラウ>

「一緒に……?」

問われて、フラガさんははっとしました。
どうしたらいいのか、どうすべきなのかは最初から決まっています。
どんな事情があってラウが飼い主の元から離れたのかは知りませんが、元の飼い主がラウを探しているとわかった以上、ラウは元いた場所に戻るべきだということはわかっているのです。
自分がラウと一緒にいたいかそうでないかは関係なく、最初からするべきことは決まっているのです。
決まっている――はずなのに。
ふいに、やわらかなラウの白い毛の感触を思い出し、ムウさんは手をぎゅっと握り締めました。

「……あいつさ」
「え?」

脈絡のない突然の言葉に驚いたキラくんに、ムウさんは苦笑しましたが、そのまま話を続けます。

「あいつさ、綺麗なんだよ。さっきも話したけど、ボロ雑巾みたいに道端に転がってたくせに少し洗っただけで真っ白になってさ。あんなに汚れてたのに、どうしてこんなに真っ白なんだろう、綺麗なままなんだろうってすごく不思議だった」

ムウさんの話を、キラくんは黙って聞いていました。

「それに、あいつは意志も強い。これはあくまで俺の憶測だけど、きっとあいつは自分以外の存在に屈することはない、そう思った。あんなにちっこいのに、強くて真っ直ぐで――でも、どこか儚いような、そんな気がして。……守ってやりたいと、思う」

そうだ、とムウさんは思いました。
本当は、ラウと一緒にいたいかそうでないかなんて考えるまでもないのです。
ただ、ラウのためにか自分のためにか、どちらに重点を置くか結果が全く変わってしまう、それだけのことであって。
だからこそ、ムウさんはこうして悩んでいるのですけれど。

「キラ?」

ふと目を向ければ、キラくんがくすくすと笑っていて、ムウさんは首を傾げました。

「……だってムウさん、まるで恋人の惚気話してるみたいで……」
「はっ?」

自分がどんな顔でラウの話をしていたか、ムウさんは知らないようです。
そのことに気付いたキラくんは、にっこり笑ってムウさんを見上げました。
わけがわからないといった顔をしていたムウさんも、キラくんにつられ困ったように笑いました。


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紗月 [MAIL]