ハボックさんが家にロイを連れ帰ったとき、ロイはダンボールの中でうとうとしているところでした。 どすん、と玄関に落とされ、びっくりしたロイは飛び起きて辺りを見回しましたが、ハボックさんが覗きこんでいるのに気付くとみゃあと鳴きました。 まだ捨てられてからそう時間が経っていないのか、あまり汚れていないからいいだろうとハボックさんはロイの首の後ろを掴んで持ち上げ、部屋の中へ連れて行きました。 足をぶらりとさせながら、ロイはきょろきょろと部屋の中を見渡していました。 好奇心で目をきらきらさせているように見えるのは、ハボックさんの気のせいではないでしょう。
「んな面白いもんなんてないっつの」
ハボックさんはロイをテーブルに下ろしてやりました。 みゃあみゃあと文句を云うように鳴くロイのことは一切無視したように、ハボックさんはどっかりと座りこむとコンビニの袋からお弁当を取りだしました。 残業のせいでまともにご飯も食べていないハボックさんはお腹がぺこぺこだったのです。 家の近くのコンビニであらかじめあたためてもらっていたので、今は少し冷めていますがお弁当はそのまま食べられそうです。 フライや焼き魚など色々なおかずの入ったお弁当をハボックさんが食べ始めると、ロイが興味津々でお弁当箱を覗いてきます。
「なんだ、お前も腹減ってんのか?」
ロイの様子に気付いたハボックさんは、お弁当のフタにご飯を置いてやってロイの前に出しましたが、ロイは食べようとはしません。 ロイが入っていたダンボールの中には、まだ乾いたり湿気たりしていないパンやお菓子があったので、きっと学校帰りの子供やなにかに餌を貰っていてそんなにお腹は空いていないだろう、とハボックさんは思ったのですが、どうもそれとは雰囲気が違うようです。 かなりの早さでご飯を口に運ぶハボックさんを、ロイはじっと見つめているのです。 ハボックさんが焼き魚に箸を向けた瞬間、ロイがみゃあと鳴きました。 思わず箸を止めて、ハボックさんはロイを見下ろしました。 ロイは真っ直ぐにハボックさんを見上げてきます。
「……お前、これ食べたいのか?」 みゃあ
ロイがあまりにも食べたそうな目で見ている……ように見えたハボックさんは、仕方ないなと焼き魚の三分の一ほどを切ってお弁当のフタに載せてやりました。 ロイはちょっと魚の匂いをかいで、一度舐めると、気に入ったのか焼き魚をぺろりと食べてしまいました。
みゃあ
あまりに一生懸命食べるロイを思わず感心して見やっていたハボックさんでしたが、ロイの鳴き声にはっと我に返りました。 まだお弁当の半分も食べていません。 明日もまた朝早いのです、さっさと食べて寝なければ、と思いハボックさんは急いで箸を進めました。 そして、ハボックさんがおかずのウインナーを摘みあげたとき。
みゃあ
再び催促されるように鳴かれ、ハボックさんは顔をしかめました。 お腹が空いているのなら、ご飯をあげるべきだとは思います。 このウインナーがひとつしか入っていないものだとしても、あげること自体は特に構わないと思うのです。 けれど。
「……なんでお前ばっかいいもの食ってんだよ……?」
そんな風にハボックさんが呆れたような声を出したは、ロイにフライの中身の白身魚を分けてあげたときのことでした。 どことなくロイの言いなりになっているような気がしてしまうのは、これがこのときだけで4度目のことだったからでしょう。 ロイが食べたいと鳴くたび、ハボックさんは仕方がないなとおかずを分けてあげていました。 ロイの真っ直ぐな目で見つめられると、どうも従わなければならないような気がしてきてしまうのです。 一時的にロイを預かっただけのつもりでしたが、例え短期間であってもこの先の自分の苦労が目に見えたようでハボックさんは深々と溜息をつきました。
そんなハボックさんを見上げて、ロイはまたみゃあと鳴きました。
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