帰宅したランディくんは玄関にどさりと荷物を置くと深く息を吐き出しました。
「けっこう重かったなぁ……」
ドアの音か荷物を置いた音か、それともランディくんの声かのどれに反応したのかはわかりませんが、部屋の中から顔を覗かせたセイランがゆっくりとランディ君の方に近付いてきました。 ランディくんが置いた荷物を探ろうとして袋の中に顔を突っ込んだセイランを抱き上げ、ランディは靴を脱ぐと荷物をちゃんと部屋の中へと運んでいきました。 セイランは少しだけ暴れていたようですが、すぐに下ろされると興味深そうに袋を眺めていました。
「お腹空いてるよな、今餌を開けるから」
オスカー先輩からセイランを預かったランディくんは、一旦家へ戻って近所のペットショップへと向かい、猫を飼うために必要なものを買いに行ったのです。 その間、セイランは静かに家で待っていてくれたようです。 大人しい猫でよかった、とランディくんは部屋を見回してほっとしました。 ペットショップのロゴが入った袋から取り出すのは、店員に選んでもらった猫用のトイレと、オスカー先輩からもらったメモにあった、セイランの好きな餌が数種類。 こんなにいろんな種類を食べるのだろうか、とランディくんは不思議に思いましたが、オスカー先輩からそういった指示があったのでそれに従って買ってきたのです。 セイランがじっと見上げているのに気付いたランディくんは、早速一番手前にあったキャットフードを取り上げました。 キッチンからお皿を持ってきて、キャットフードを入れてやるとセイランの前に置きます。 が、セイランは食べようとしません。 しばらくは匂いをかいだりと興味を持っていたようですが、飽きたのかそれともお腹が空いていないのか、くるりとキャットフードに背を向けてしまいました。
「ち、ちょっと待って!」
ランディくんの声に、セイランは足を止めて振り返りました。 けれど、なぜかランディくんは固まってしまいます。 引き止めてどうするんだろう、オレ……とランディくんはぐるぐると考えこんでいました。 そんなランディくんを、セイランはじっと見つめていました。 そのときランディくんは、オスカー先輩の言葉を思い出していました。
『こいつ今朝はあまり食べなかったから、家に着いたら何か食べさせてやってくれ』
確かにオスカー先輩はそう云いました。 だから、セイランは今きっとお腹が空いているはずで。 でも、キャットフードは食べようとしなくて。 ……だったら、どうすればいい?
ランディくんの思考はそこで止まってしまいました。 セイランの尻尾がぱたりと揺れました。
どちらともなく、これからどうなるんだろうと思ったなんて、今は誰も知りません……。
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