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2005年12月21日(水)  見覚えのある風貌
ひとりで、クラシックのコンサートを聴きにいった。
誰も誘おうとは思わない。
ひとりでひとりの世界でゆっくりしていたかった。

国際フォーラムの高い高いところから、舞台を見つめていた。
見覚えのある風貌のトランペット奏者。
私はあのプロの演奏者に2回ほどレッスンを受けたことがある。
私が持っている楽器は、彼がいくつもの中から選んでくれたものだ。

キミの唇の形や演奏の癖なら、このトランペットが一番似合うと思うよ。

いくつも床に並べてあったトランペットをすべて吹いてみて、その人は言った。
彼はもうそのことを覚えていないだろう。
10年ほど前のことだから。
幾人もいたレッスン生のひとりでしかなかったから。

彼の音がここまで届く。
合唱の声が空気を震わせる。
ティンパニーは鋭く、ホルンは反響して、ヴァイオリンの弓がゆらゆらと揺れる。
トランペットの音が突き抜ける。ここまで届く。

私はあのときの光景を忘れない。
白に近いシルバーのキラキラしたトランペットを、ひとつ選んで私に差し出してくれたことを。
だから、私はこうして密かに彼の出演するコンサートを選んで、ひとりで聴きに来る。


鳴り止まない拍手の中、彼は舞台を去って行った。
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