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2005年06月17日(金)  真っ黒な足
陽が照っている。

首の辺りがぬるぬると汗で濡れているのがわかる。
重いバッグを持ち替えて、私は俯いて歩く。
そのうち頬から汗が滴り落ちるかもしれない。

電車がすべての音を掻き消して頭上を走っていく。
高架下の影に私は素早く逃げ込んで、首の汗をぬぐった。

茶色がかったダンボールがいくつか並んでいて、
もう原形をとどめていない自転車がガードレールにもたれかかっていた。
黒いといっていいほどの布切れが、電車の騒音で揺れていて、
ダンボールの隙間から、真っ黒な足が見えた。

私は、涼しい影の急な暗さに立ちくらみがして、
真っ黒な足を一瞬見逃してしまった。

彼は死んではいない。
眠っているのだ。
真っ黒な、真っ黒なその男は、足も腕も顔も髪の毛も真っ黒で
骨と皮だけの体を、冷たそうなアスファルトに横たえていた。

私は無意識に息を止めて、彼の側を通り抜ける。

彼の脇をスーツの上着を肩にかけた男が歩き、
制服姿のOLがふたり通り過ぎた。
また、スーツの男が歩いていき、女が歩いていった。
黒い男は、周りが何も見えないかのようにただじっとその場で寝そべり
体を横たえている。
開いた目だけが白い。

陽が照っている。

彼は優雅だ。
私はこんなにも汗をかいているのに
彼は何にも動じず、ただ自分の脇を通り抜ける足ばかり数えることが出来る。

高架下に涼しい風が通り抜けた。
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