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2005年05月20日(金)  わかっていない人
もうバレてると思うけど、私は何もわかっちゃいない。
知ったかぶりして、わかった風なことばかり書いているけれど、私は何もわかっちゃいない。
「自分は何も分かってない」ということだけはわかっている。
わかっちゃいるけど、わかっちゃいない。


高校生の頃、隣の席にすてきな男子が座っていました。
私は、横向きで机にダラリと寝そべり、隣の彼の横顔をノートの隅っこにスケッチしていました。
鼻の筋がすっと通った、きれいな顔をしていました。
私は彼の鼻と顎のラインばかり描いていました。
彼はとても優秀な生徒で、とても物静かな男の子でした。

大学生の頃、授業を受けるときはいつも一番後ろの席に座っていました。
音楽史の勉強はつまらなくて、風に揺れるカーテンばかり眺めていました。
ぼんやりとしていると、教授に指をさされ「今の問いに答えなさい」とよく言われていました。
そんな私にいつもコソコソ答えを耳打ちしてくれていたのは、作曲科の女の子でした。
そんなに親しくもないはずの彼女なのに、どうしてピンチの私を助けてくれるのか、私には今でもよくわかりません。

自分がそのときいくつだったかも覚えていない昔、ずっと幼い頃、私は母に言われて自宅の二階の部屋でじっとしていました。
一階の居間には、知らないお客さんが来ていました。
母は、私に二階に行ってなさいと言い、私はその言いつけを守って二階の部屋にいたのです。
何分たったのか、レースのカーテンの隙間から庭を眺めていると、そのお客さんたちが帰っていく後ろ姿が見えました。女の人と男の人と、小さなけれど私よりはいくつかお兄さんの男の子でした。
窓に顔をくっつけて、私は彼ら3人の姿をじっと、じっと見つめているだけでした。
揺れるカーテンが私の頬をくすぐっていました。


私はわかっていない。
どうして、私はあのときあの男の子の横顔ばかり書いていたのか。
どうして、あの子はあのとき私に答えを教えてくれたのか。
どうして、あの3人はうちに来て、そして帰っていったのか。
わからないことは、わからないまま。
ずっとずっと時が過ぎてわかることもあれば、わからないままのこともある。わかっているはずのことがわかっていなかったと、自分で気づくときもある。わかったように思えて、実はわかっていないのに、それもわからないまま死んでいくこともある。
わからないことはわからないままで。
わかっていても、わからない振りをしたことがよい場合もある。
私はもう何も知りたくないと思う。
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