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2005年05月19日(木)  猫が鳴く夜
夜中、もう0時になろうかという夜中、
コツンコツンとドアをノックする者がいる。

夜中のノックは胸を騒がせる。

バスタオルで髪の毛を拭いていた手を止めて、小さな覗き穴からドアの反対側にいる人間を見てみる。誰も居ない廊下のクリーム色の床には白い小さな灯りが反射して、時々明滅している。

チェーンを外してドアを少しだけ開いても、誰の姿も見当たらない。
もう少し開けてみようと、私は素足で玄関におりた。
廊下の明かりが一瞬消えて、私の部屋から漏れる灯りがぼんやりと私の影を映している。

そこには、何も言わない恋人が立っていて、私は何も言わず裸足でただ玄関に突っ立っていた。どちらも、口をひらく気はなく、というより言葉が見つからず、いや、そもそも言葉を探したとしてもそれはきっと見つかるはずもなく、時として何も言わなくていいこともある。

好きだという理由だけで恋愛は成り立たないのだろうか。
私は、誰かを好きになるとき、自分が酷く嫌な人間に思える。
誰かを好きな自分が、すごく好きだと思う時間より、大嫌いだと思う時間のほうが遥かに長い。
私は一体どんな恋愛をしてきたのだろうか。
自分は欠陥だらけの人間なのではないだろうか。

「言葉など要らない関係」なんて嘘だ。
言葉すくなでもわかり合える関係なんて大嘘だと思う。
言葉など必要ともせず通じ合える関係なんてどこにもない。
だけど、何も言わなくていいときもある。
私たちは日々言葉を使って伝え続けなければ、なんの人間関係も持続させることは出来ない。
相手に甘えて言葉を削ぐこともなく、かといって言葉だけにも頼らず、出来ることなら穏やかに誰かと付き合っていけたらいいのに。


謝るべきなのは私の方で、
恋人が謝りに来る必要はない。
謝るべきなのは私の方なのに、
先に謝るのはいつもいつも恋人のほうで、
出遅れてしまう自分に歯痒さをおぼえる。


まだ髪の毛が濡れていたけれど、私たちは眠ることにした。
すごく静かな夜で、猫も鳴かない夜だった。
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