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2005年03月15日(火)  はらはらと散る
なんだかとても甘えたくなって、恋人の家に連泊した。
同じスーツで、中の洋服だけ取り替えて会社に行った。
私はあんまり恋人の家に行かない。
恋人と家でのんびり過ごすなら、自分の家のほうがいいからだ。
でもなんとなく、気分を変えてみたくなって、甘えたくなって、コンコンとドアをノックした。

春になったらお花見をする約束をしている。

昨年の春を思い出した。
ずっと長いこと病院のベッドの上にいて、早く家に帰りたいとそればかり願っていた。
陰鬱な冬の風景を、ただ窓から見渡すだけで、春だけをただ待ち焦がれるばかりだった。
春になったら退院させてくれると主治医と約束したからだ。
桜が咲く頃ね、暖かくなる頃ね、と説得され続け、つぼみが膨らんで桜が咲いてもまだまだ入院生活は続いていた。

病院の深夜、上着を着こんで、靴下を重ねてはいて外へ出たら、思ったほど寒くもなく、門を出て少し歩くと大きな大きな一本の桜の木にたどり着いた。真っ暗になりきらない東京の夜空からの明かりと時々通り過ぎる車のライトで、はらはらと散る桜の花びらが見えた。
なんて儚いのだろう、なんて弱いのだろう、なんて悲しいのだろう、なんてキレイなのだろう、そんなことを思いながら桜を見た。
昨年の桜は、そんな風に楽しんだ。

私の後ろをついて来て、あのとき一緒に夜桜を見上げた恋人は、薄着の服で寒そうに腕を組んでいた。


恋人の家の冷蔵庫にはなにも食べるものが入っていなかったので、もう一度外に出かけ、24時間営業のスーパーへ行った。

リンゴを選ぶ恋人の後ろ姿を眺めながら、ぎゅっと手を握りたいと思った。
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