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2005年02月01日(火)  やる、やらない
今日、ふと、ああそうかそうか、今日はあの日かと思い出した。
そんでもって、いろんなことを思い返して、くすくすとひとりで思い出し笑いばかりしていた。

音楽大学というところは、たいていのところが体育会系のノリだと思われる。
本当の体育会系がどんなものかは知らないけれど、たぶん私たちの大学は体育会系だったと思う。なにがそうかって、新歓コンパというものは新入生に倒れるまでお酒を飲ませる場だったし、(「俺の酒が飲めないのか」と無理やり酒を飲ませる馬鹿な先輩がたくさんいた)先輩方がいらっしゃったら椅子を用意し灰皿を用意しジュースを買ってきて先輩方の楽器を運び、先輩方が帰られるまで自分たちも帰ってはいけなかった。(車のお見送りまでやらされていた)
私は、管楽器科だったのだけれど、管楽器の生徒達はほかのピアノや声楽や作曲専攻の生徒達と違って、各先生ごとに“門下”という制度があったので、その上下関係は非常に厳しかった。1年生から4年生のトランペット専攻で集まって週に何回かは練習をしていたし、週に一回はオーケストラやブラスの授業があったので、常に楽器ごとのグループで行動しなければいけなかった。だから、その体育会系ノリはピアノ科たちの比じゃない。だって、ピアノ科なんて先輩や後輩がいなくったってどうにでも練習できるじゃん。

私は、そういう馴れ合いにはとても反発を感じるしバカバカしかったので、どんなに周りにギャンギャン言われようとそんな奉り方をするのはぜったいにやらなかった。アホアホしいから。

で、私たちが入学したときも養老乃滝のひっろい座敷でコンパをした。オーケストラのコンパ、ブラスのコンパ、金管楽器のコンパ、トランペットのコンパなど数々のコンパが繰り広げられ、そのメンバーはたいてい同じ顔触れなのだけれど、なにせ酒好きな人たちが集まる体育会系なので、なにかと理由をつけてはいろんなコンパが開かれていたのです。

先輩を奉らないかわいくない新入生ではあった私も、やはりコンパの席ではお酒をぐいぐい飲み、ところどころの記憶が途切れてしまうほどの飲みっぷりでわいわい騒いでおりました。あるコンパで、なぜか管楽器のコンパに潜り込んでいたピアノ科の男の先輩と仲良くなった。で、べろんべろんになった私たち新入生は、それぞれの先輩方に家まで送ってもらったり、家に泊めてもらったり、二軒目三軒目に連れて行かれたりとしていたのだけれど、私はもうすっかりタコみたいに酔っ払ってしまったので、誰かに家へ送ってもらうことにした。
そのときは、私鉄で40分くらいのところに住んでいたのだけれど、誰かが私の腕をとってちゃんと支えてくれて電車に乗ってくれたのです。そのときは、一体誰が私を送ってくれようとしてくれているのかさっぱり気づいていなかったのだけれど、途切れ途切れの記憶の中で「ラッキー!誰か知らんけど送ってくれるらしいから、とりあえずラッキー」とか思っていた。ちなみに、酔っ払いの私は、40分の乗車時間も5秒ぐらいしか覚えていないという記憶しか持っていない。酔っ払うってなんて幸せで楽しいことなんだろうね。

で、駅について夜道を歩いていたら、ふと、誰が送ってくれているのか気になった。
誰が私を送ってくれようとしているのか?
40分もかけて電車に乗って。
というか、もうこの時間だと家まで帰る電車はもうないよ。
ということは、うちに泊めなければならないのではならぬか?
と、不幸なことにだんだん酔いもさめていき、あん?と相手の顔を見ると、さっきのコンパの席で仲良くなったピアノ科の男の先輩で、「えー、男かー」とあらためて相手の正体に気づいてびっくりした。
酔っ払いってとても身勝手なもので、「なんでここにいるの?」とか「うちに泊まるの?」とか、ちょっと我に返りながら、しかもタメグチでその先輩にたいしてごねていた。
えー、泊まるの?
泊まりたいの?
泊まらなきゃ帰れないもんね。
どうすんの?
来るの?来ないの?
などと、散々詰め寄っていた気がする。(とても朧気)
というか、私は嫌なのね。来て欲しくないわけ。ひとりでゆっくり寝たいの。だから、えー、来るの?やだー。と、ここまで送ってもらったくせに、とても身勝手な酔っ払いなわけです。
マンションの前まで来て、やんやともめて、というか私がひとりでどうするのどうするの?と聞きまくっていただけなのだけれど、その男の先輩は節操のある?人だったので「い、いや、いいよ。大丈夫。俺、男だから、ファミレスで時間つぶしたってかまわないし」と言ったらしいのだけど、後輩を家まで送った夜中、ひとりファミレスで始発を待つこの先輩の悲しい後ろ姿を想像すると、それもまた可哀想だなあと思い、
えー、お金持ってるの?
寒いよ?
ひとりだよ?
淋しくないの?
と、泊めたいのか泊めたくないのかさっぱりわからない酔っ払いだったらしい(朧気過ぎてあとから聞いた話し)。
んー、んー、じゃあいいよ。
でも玄関で寝てね。
なんにもしない?
なんにもしないの?
と、あんた何様ですかっていうくらいの、上からの物言いで、その先輩を部屋に入れたらしい。
お互いにテーブルを挟んで座ってテレビを見ていたらしいのだけれど、「これはやられる」と私はずーっと思っていたことを覚えている。やられる、やられると自分で招いた状況ではあるのに、これはぜったいやられると馬鹿みたいにぐるぐるぐるぐる考えていた。
ねえ、やるの?
やるの?
やるの?
やらないの?
やるの?
と、思いついたことはすぐ言葉にしてみないと気がすまなかったみたいで、やるの?やるの?とずっとその先輩に確認していたようです。
……やらないから。
と、その先輩は一言答えて、やるの?やるの?って聞く女とはやりたくない、と思ったそうです。

で、まあどうなったかと言うと、私は健やかに眠り、その先輩も部屋の端っこで眠り、そして翌朝を向かえ、すごくお決まりなんだけど、「だれ?」と、私は寝ぼけてその先輩の顔を見て言った。


そんなこんなで、その先輩とはその後も仲良く遊ぶようになり、たぶんあのときやらなかったから、今でも遊んでいられるのだろうし、今でも仲良くしていられるのかしら。あのときやってしまっていたら、こんなふうにはならなかったよねー、と言うと「お前とは死んでもやらない」と言ってくれる彼は私のマブダチです。
やる、やると、下世話な話で申し訳ない。
で、今日はそのマブダチの誕生日だったなぁと、今日ふと思いたったのでした。
29歳になられたそうです。大変おめでたい。
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