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2004年11月22日(月)  透明な空
冬の朝は遅い。
家を出ても、まだ夜中のように辺りは暗い。
鼻の奥がつんとするような寒さに、マフラーをきつくしめなおした。

自動販売機だけが照らす朝の道を、私は駅を目指して歩く。駅に近づくたびに、同じように首をすくめて寒さに耐える人の姿がちらほらと見える。
こつこつと響く私の靴音だけが、朝の静寂をやぶっているような気がする。


こんな寒い日、あの頃まだ私は高校生だった。
通学する途中、私はその人とばったり出会った。
ふたりで手をとりあって、来た道をUターンした。
その人の自転車の荷台に腰掛けて、寒さに俯く人の流れに逆流した。

冬の公園は、落ち葉がぱちぱちと足の下で音を立て、見上げると頭の上いっぱいに手を伸ばしたような枝葉が見える。枝葉を透かして青く透明な空が見える。
きりりとした朝に、鳥の声がした。

その人がベンチの上を手で払って、私はその上に腰掛けた。
その人は走ってどこかに行ったかと思うと、缶コーヒーをふたつ握り締めて戻ってきた。
温かい缶コーヒーは、感覚のない私の手でじっと温度を取り戻していく。
その人の頬は赤く、肌は澄んでいた。
唇はかさかさでもその人の手のひらは潤んでいた。

子供みたいな恋愛だったけれど、私はその人に大切に扱われていたのだと思う。
冬の朝、たまにそんなことを思い出す。
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