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| 2004年09月12日(日) 淋しい人 |
| 背筋を伸ばして何かに臨もうとする彼の毅然とした後姿を、 私は見送りながら、そしていろんなことを思った。 とても淋しい男の人だったと思える。 人は誰だって誰かに理解されたいと思いながら生きている。 そして、少しでも理解してくれる人を愛しいと思う。 その理解がたとえ錯覚だったとしても、それを認めず、 ただただ愛されたいとか理解されたいとか、愛したい理解したいと思いながら、 誰だってそんなふうに生きていく。 そんなことを考えていくと、彼は理解されたがっていたにも関わらず、 どうしてか、誰からも遠ざかって、ひとりで居たがったように見える。 とても淋しそうで悲しそうで、誰かにそばにいて欲しいくせに、 誰かがそばに近寄ろうとするとびくびくと警戒するような、そんな男の人だった。 孤独というものに、耐性の無い人だった。 彼の部屋のフローリングの冷たさとか、 放っておいた洋服に入った皺だとか、 なんだかそういう小さなものから、私は彼の孤独を感じられた。 孤独の中に放っておくには、彼はあまりにも儚く 私は私の手を尽くせることをすべて彼にしたいと思った。 それがたとえ同情であったとしても、彼から興味を逸らすことは出来なかった。 そして、どうしてそれほど自分を孤独に追いやるのか、それがとても謎めいていた。 そんな思いに至るまでに、一体何があったんだろうと、私はずっと彼のことを考えた。 そしてそれが、そのころの私に出来た、精一杯の彼に対する理解だった。 頑なな彼の心がゆっくりと開かれることを、ただ待つことが私に尽くせる唯一のことだった。 どれくらい長い時間がたったかわからないけれど、いつしか彼は自信のない弱々しい笑顔を見せて、ゆっくりと心を開く。 開放された喜びと外への恐れが混じったような笑顔だった。 そして今、彼は、私を入り口にして外に飛び出し、背筋を伸ばして去っていく。 さようならと、声を震わせて彼は言った。 それが、彼にとっての最後の淋しさだと信じたい。 |
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