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2004年08月17日(火)  私の遺伝子
先日、妊娠した夢を見た。

朝目が覚めて、恋人に「ヘンな夢を見たよ」と話しかけたけど、どんな夢? と聞かれて不意に話をするのが怖くなった。夢は、口に出して話せばきっと正夢になるから。

私のお腹はもう随分膨らんでいて、私は自分の足元を見ることが出来なかったしとても体が重く感じた。張り出した腹に手を添えて、私は向こうに蜃気楼が見える道を歩いていた。今日みたいに暑い夏の日だ。
このお腹の子供の父親として、私はなんの疑問も持たずに恋人の顔を思い浮かべた。彼は、いい父親になるだろう。いい夫にもなるだろう。結婚する相手として疑問を持つ部分が彼にはない。私は、汗をかきながら家へとたどり着いた。涼しい部屋に入ると一気に汗が引いた。恋人が優しく私の頭を撫でる。二人きりで過ごせる時間はあと残り僅かなんだろうなと思い、そして幸せって一体なんなのだろうと思った。

私は途端に、自分の体を窮屈に思った。不快感にも似た嫌気がさして、イライラした。このお腹を切り裂きたい気持ちになった。恋人の胸を叩いて、どうして私だけこんな体にならなければいけないのかと訴えた。どうして私だけがこんなお腹になってしまったのかと叫んだ。どうして妊娠してしまったのかと聞いた。どうして妊娠させてしまったのかと責めた。私はまだこんな風にはなりたくないのに、どうして待ってくれなかったのかと泣いた。私の自由を返してと彼の胸を叩いた。
彼は、何も言わずにただ悲しそうな顔をして私の頭を撫でるだけだ。言葉もなくそれ以上の仕草もない。彼を責めてもなにも変わらないとはわかっているのに、私は望まない妊娠をとても恨んだし、絶望的な気持ちになった。

泣きながら彼の胸を叩き、彼は悲しそうにそれをただ受け止めるだけだった。


やはり、こんな夢を恋人に話さなくて良かったと思う。
言えない言葉を、その夢は反映させているような気がした。
彼がもしその夢の話しを聞いて、何も傷つかなかったり何も気にしなかったりしても、私は聞いて欲しい類の話ではないと思える。正夢になるのが怖いからじゃなくて、私の本音を彼に覗いて欲しくないからかもしれない。

私は、いつどんな形で子供を授かるというのだろう。
誰と子供を作って誰と一緒に育てるというのだろう。
私の子供の父親としても、私の夫としても、恋人はなんの不足もない人かもしれないけれど、私のほうがきっと彼の子供の母親としても、彼の妻としても、不足ばかりが目につく人間のような気がして仕方ない。

もちろん、私たちのあいだで具体的な結婚の話しがあるわけではないのだから、そんな心配などしなくてもいいのだけれど、私個人のことだけを考えると、子供が出来ることを不自由だと思う人間が、いい母親になるわけがないと思えた。
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