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2004年08月14日(土)  光が時間を切り刻む
夏だから、オンナノコはみんな素っ裸同然の格好で、煙はモウモウだし光は時間を細かく切り刻んで、熱気というよりは気だるい感じで、ドラッグとかキスとかお酒とか、そういうものが飽和している。

23時に迎えに来た車に乗って、踊りに行く。ジーンズのポケットにお金と煙草さえ持っていれば、あとはとくに何もいらなくて、大学生のある時期は毎週のようにここに来ていたし、社会人になってからも月に何度かは来たし、そのうち知り合いがたくさん出来てここに来れば誰か知っている人には必ず会っていたけれど、クラブ以外の場所でその人とすれ違ってもぜったいにわからないだろうなあって、思う。今は、そのときに知り合った人とは誰一人として連絡をとっていないけれど。
音楽が格好いいとか、ファッションの一部で流行りというよりは、無我夢中で頭を振って踊ったり誰の目も気にせずはしゃぐことが何よりも楽しかったし、そこで知り合う異性との出会いに期待を膨らませていたのかもしれないし、よくわからないけど、狂ったように毎週ここで遊んでいた頃を思って苦い懐かしさを思い出しそうになった。


店のカウンターには少し老いた外人のバーテンがいて、強いお酒を頼むと、「オンナノコはそんなに強いお酒を飲むものじゃないよ」という顔で指を横に振ってはいつもアルコールの弱いお酒しかくれない。

光が時間を刻んでみんながフロアで狂っているころ、2階のシートではきっとドラッグが使われているだろう。酒に酔っているのか薬に酔っているのかわからないような人がたくさんいるけれど、だからといってどうってことはない。

トランスになって踊るオンナノコのひとりひとりの腕を引っ張って腰をくねらせながらキスをしている男がいる。踊りながらキスをして、抵抗もせず身を任せるオンナノコを置いて、また人の波をくぐってはまた別のオンナノコの腕を引っ張って唇を重ねている。

疲れて椅子に腰掛けていると、知らない男が近づいてきて「ひとり?」と聞く。ひとりだからってなんなの、ひとりじゃなかったらどうなの、といつも思う。

テキーラをもった男性がテーブルを回り、客にライムを噛ませて飲ませてはその客の頭を揺すって喜んでいる。

ビールを片手にスーツを着た男からはすごくキツイ香水のにおいがする。きっと青山だとか広告代理店だとかに勤めていることを鼻にかけているようなタイプで、すごく白ける。

酔っ払って煙草がないことに気づいた。男がテーブルを探し回っている間に、また別の男が「ここ、座っていい?」と声をかける。世の中、競争社会だなと思う。

耳をつんざくような音楽と照らされたフロアがぐるぐると回って見える。奥の暗がりの中にあるロッカーの隅で誰かと誰かが抱き合っているのが見える。

お酒はきれることなく、誰かが運んでくれる。誰がとってきてくれたのか誰が買ったのかしらない。ポケットのお金は使われることもなく、私はずっと酔った状態のままでいられる。

人気のあるDJなのか有名なDJなのか知らないけれど、その音楽が鳴った途端みんなブースに向って歓声をあげながらフロアに飛び出る。

耳元で、「どこか行かないか」と男が叫ぶ。蝿を追い払うように手を振って、じっとりと汗をかきながらまた踊る。黒人の男性が陽気に叫んで日本人のオンナノコが奇声をあげているのが見えて、少し平衡感覚を失くす。

疲れたし飽きたし、連れた友達を置いてひとりで外に出た。涼しい風にあたりながらここから池袋まで歩いたらどれぐらいかかるだろうと考える。時間はもう4時になっている。道路に飛び出ると雨が降ってきて、酔っ払いがはしゃいでいた。

タクシーを拾った途端に雨は本降りになってきて、家に戻ってきたら徹夜でオリンピックを見る恋人と目が合った。「おはよう」と言ったら「ふん」と言われた。

仕方がないのでふたりで「皇室日記」という番組を見て寝た。
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