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2004年06月20日(日)  狂った風鈴
午後9時。
空を物凄いスピードで雲が流れる。すっかり夜なのに雲は真っ白く際立っている。白い雲を映す光は、東京の街の明かりなのだろうか。空は果てしなく濃い青色がうかがえる。西から東へ雲は小さな塊にわかれて逃げていく。

台風が接近している。西日本に上陸する恐れがあるそうだ。四国をすっぽり覆ってしまうほどの大型台風。今ごろその行き先を東京の街に定めているのかもしれない。逃げるように雲はあっという間に流れる。鳥も虫も空も雲も嵐に備えて避難しているのに、のんびりと贅沢な休日の夜を楽しみ、街中に無意味なネオンを光らせた人間は、きっとこの世で唯一の自堕落的楽観主義な動物なのかもしれない。

風が強く髪を撫で付ける。風さえも逃げ惑うように右へ吹き左へ吹き、何かの出口を探して慌てふためいているようだ。抑制され続けてきたものが一瞬にして飛び出したかのような風の圧力が、私の呼吸を止めようとしているのかもしれない。東京中のエアコンのファンが外の涼しい風を重々しくさせる。嫌な熱気がアスファルトから袖の中に入り込んでくる。びゅんと風が吹く。私のカーテンをひるがえす。どこかの家の風鈴が狂ったように鳴る。

サンシャインビルのてっぺんに、もうすぐ真っ白い雲が引っかかる。急いで逃げる雲を捕まえて逃げ場所を聞いたら、私もすぐにそこへ避難することにする。雲に乗って嵐の来ない場所まで。
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